板を繋いだ橋を登り切った屋敷のてっぺん、巨大なあばら骨の装飾がされた通路の先の小屋が小鬼たちの部屋のようだ。ソラが薄板の扉を開けたときに見えたのは、ちょうど小鬼たちが壁に取りつけられているパイプの中へ心を放り込んだ瞬間だった。
 扉の音で小鬼たちがいっせいにふり返る。気味の悪いお面の裏から口々に「あ!」とか「来た!」とか「おっぱらえ!」と襲ってくる。
 自分の膝程度の大きさしかない彼らはとても俊敏で、スカートやしっぽを引っ張ってきたり、回転しながらタックルしてきた。ドナルドの包帯を巻き取り、グーフィーの頭に刺さったネジを踏みつけ、ジャックの長い足の間をすり抜けて、ソラへボールを投げつけてくる。

「も〜〜っ、怒ったぞ!」

 包帯を半分剥がされたドナルドがカンカンになって、小鬼たち目がけてはちゃめちゃに魔法を唱えはじめると、壁や床が焦げたり凍ったりした。ジャックまで「派手でいいね」と一緒に魔法を唱え始め、狭い部屋の中で小鬼と魔法の両方から逃げ惑うことになってしまう。またタックルされそうになって、氷張になった床で滑りソファに尻もちをついた。
 小鬼を捕まえようとしていたグーフィーに電撃が当たりそうになったところで、壁際にいたソラが「俺に任せて!」と、キーブレードを野球ボールのように振りかぶって投げた。回転しながら飛ぶキーブレードは小鬼のひとりに当たると瞬時にソラの手へ戻り、また別の小鬼へとヒットする。見事なストライクレイドが全て決まった頃には、小鬼たちは頭の上で星を回し全員白旗をあげていた。
 降参した小鬼たちに不気味なお面を外させて、一箇所に集め床に座らせる。

「おまえたち、どうして僕たちが作った心を盗んだりしたんだ!」

 ジャックが叱りつけると、魔女帽子のショックが「だって!」と叫ぶ。

「あたしたち、命令されてただけ! ジャックの計画、ブギーに話したら、心を横取りしろって……悪いのはバレルよ! バレルが、心のことをブギーに報告しようって言い出したの!」

 赤鬼のロックまで「うん、そうだそうだ!」と同意したので、バレルは丸い瞳をきょどきょど動かし「だっ、だって、みんなが……」と口ごもった。

「言いわけするなんて、見そこなったわ!」

 ショックにきつく責められて、バレルは黙ってうつむいてしまった。こちらから見ると全員同罪なのだが、仲間に責任を押し付ける姿は醜く、反省の色は感じられない。

「悪いのは、全員だろ!」

 ドナルドの正論を素直に受け入れられないのだろう。ショックは更にキンキンした声で反論した。

「あたしは悪くないんだから! ブギーに命令されただけだもん!」
「そういえば、心はどこ?」

 問うと、ショックはフン! とそっぽを向いた。

「心はブギーに渡しちゃったから、あたしたち、持ってないわ!」
「ブギーにおどかされて、しかたなかったんだよう……」

 バレルを責め立てた勢いはどこへやら。ロックの方は心底怯えているようだった。
 ソラがひとつため息を吐く。

「心を盗んだことはもういいよ。その代わり、ブギーの居場所まで案内してくれ」

 すると、ロックは激しく首を横に振った。

「ブギーのところまで案内なんか、できないよ! 僕たちまでブギーに食べられちゃう!」
「それじゃあせめて、居場所を教えてよ」

 グーフィーの質問に、バレルがダメダメと拒否をする。

「ブギーのいる場所? しゃべるなって命令されてるんだよ。あと、レバーのこともしゃべっちゃダメって言われたっけ」
「あんたって、本当にバカね!」
「しゃべっちゃダメって言われてるだろ!」

 ショックとロックがバレルを睨んだが、すぐにソラは壁に取りつけられていたレバーを下に降ろした。大きな歯車がふたつ回り始めて、屋敷の下の方から何かが動く音がする。

「ブギーは心をどうするつもりなの?」
「ブギーが心をどうするかって? えーと……よくわかんないよ……」
「グーフィー。そんなこと、ヤツに会えばわかることさ」

 バレルと話していたグーフィーにジャックが声をかけると、バレルは慌てて言った。

「ブギーに会うなんてやめなよ。高いところから飛び降りるのはすっごくこわいんだよ」
「ふんだ。あんたたちなんかに、緑のとびらを見つけられるはずがないわ!」

 ショックの捨て台詞を背に、再び屋敷を探索することとなった。行道と比べ、屋敷からぶらさがっていた巨大なランタンが足場と同じ位置に降りてきていたり、開かなかった小部屋に入れるようになっている。
 バレルの「飛び降りる」発言をヒントに屋敷を下へ下へと下ってゆくと、ついに玄関よりも低い場所に目立つ緑色の扉があるのを発見した。黒色でヘンテコな顔のペイントもなされている。ショックの言っていたみどりの扉はこれたろう。ソラが確信めいて言った。

「きっと、ブギーはここだ!」

 みんなで頷き合って、ソラを先頭に扉を開くと真っ先に目に飛び込んできたのは、足元よりとても低い場所に広がる巨大なカジノルーレットの床だった。寂れた屋敷の外観とは一変して、なんて派手な内装なのか。色とりどりの照明で飾られたブギーの拷問室だった。

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