キーブレードを失ったリクは、すぐにソウルイーターを出して斬りかかってきた。
 島でチャンバラしていた時のように余裕ぶって待ち≠フスタイルはしない。ギラギラと焦った顔で剣を必死に振り下ろしてくる。
 咆哮と共に振り下ろされるリクの一撃は重く、弾くと腕が痺れた。乱暴に振りきられると勢いに負け体勢がくずれてしまう。ドナルドとグーフィーもリクの攻撃の迫力にたじろいでいた。

「どうした、ソラ!」

 受け流したソウルイーターがエントランスの床石を砕き、壁際のツボを叩き割る。

「おまえの言う、心の力ってやつを見せてみろよ!」
「──ドナルド、グーフィー!」

 こっちだって負けてはいられない。リクのソウルイーターにキーブレードをぶつけ、リクに隙ができたときにドナルドの魔法が、こちらがリクに押された時はグーフィーが援護してくれた。
 手加減する余裕はない。何度目かの斬り結びのとき、リクの横腹へキーブレードを叩きつけて、やっとリクの猛攻が止まった。飛びのき咳き込むリクの様子をうかがっていると、闇が溶けていつものリクの服に戻る。

「こんなところで、俺は──」
「リク……!」

 もしかしたら、リクが冷静になって仲直りできるかもしれないと期待した。しかし、リクはこちらを一瞥すると何も言わずに走り去ってしまう。

「おまえの心が通じたようだな」

 背後の扉が開き、冷静さを取り戻したビーストが戻ってきて、ドナルドとグーフィーを見て言った。
 彼に無言で頷き返す。だが、まだまだ解決しなければならない問題は山積みだ。
 戦っている最中のリクの表情を思いだす。
 あんな目をしたリクを放っておけない。カイリとフィリアに会えるとき、またリクにも会えるはずだ。

「みんな、急ごう」

 気がはやるまま、不気味に静まり返ったハートレスだらけの城を走り出した。





★ ★ ★


 


 わき腹の痛みにイライラしながら、全速力で礼拝堂まで走ってきた。

「なぜだ。俺のものだ、俺の……」

 幼い頃の秘密の約束──あの時、やっとこの手に得たと──戻ってきたと感じた。なのに──。

「真に強い心の持ち主が、キーブレードを手に入れるのだ」

 背後から生気のない男の声が耳に届く。
 振り向けば、故郷が闇に落ちたときに会った茶色いローブの男がいた。

「心? 俺の心があいつより弱いっていうのか?」
「あの瞬間では」

 認めたくないが、分かっていた。
 どんなに脅しても、無力化しても、ソラは決して退かなかった。許しを乞おうとも、縋ろうとしなかった。カイリを救う手段なんてないくせに、瞳はどこまでもまばゆく、澄んだまま──。

「だが、人は強くなれる。闇を恐れることなく、扉の奥へ進んだおまえには──勇気がある。さらに深い闇へ突き進むほど──おまえの心は強くなる」

 男の言葉は甘い誘惑となって、心地よく心に染みこんでくる。
 しかしこんな脆い己の心が、すぐにあのソラを超えるほど強くなれるのか?

「どうすればいいんだ──」
「闇に心を開くのだ。それだけでいい。おまえの心そのものが、すべてをのみこむ闇になるのだ──」

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