テラとキスをしないと出られない部屋、と張り紙された密室に閉じ込められていた。

「どうする? 従う?」

テラとはそういう関係じゃないけど、別にいいよ。と付け加えると、テラの返事は冷静だった。

「このキーブレードで開かない扉はない」

よく見ると、扉は壁に打ち付けられていて、とてもふつうに開くものではなかった。

「それなら、異空の回廊を開けばいい」
「私、あんたみたいな鎧、持ってないんだけど」
「大丈夫だ、必ず助けに来るから待っていてくれ」
「あの張り紙に小さく、一人だけ逃げたらもう一人は死ぬって書いてあるんだけど、気づいてた?」

そして、いま、目の前でテラに心底情けない顔をされている。

「すまない。責任はとる」
「いいよ。キスのひとつくらい」
「な……こういう行為に慣れているのか?」
「まさか。殴られたり、蹴られたりすることに比べたら、どうってことないってだけ。あんたには借りもあるしね」

親がいなくなって、貧しい環境で生きてきた私は、物心つくころには、悪い大人の手下として盗みをさせられてきた。最近、このテラという男と出会い、大人たちを倒してくれたおかげで、盗む生活から脱却し、真っ当に働く生活を送れることになった。
テラには感謝している。まだ、素直に礼を言えてないけど。

「俺は、そんなためにしたんじゃない」
「あぁ、そっか。あんた、育ちが良さそうだもんね。むしろこっちがごめん。相手がこんな美人でも、ナイスバディでもない女じゃ」
「違う!」

予想外の怒鳴り声にビクついてしまった。テラがはっと眉を下げる。

「 見た目は関係ない。こういう行為は、本来なら強要されてするものでも、ましてやどうでもいいと投げやりになるものでもない。もっと、自分を大切にするんだ」

お説教されている。この鈍感。あんたは私のお母さんか。

「だから、あんたならいいって言ってるじゃない」
「だめだ。好きでもない相手に」
「好きな相手だって言ってんでしょ!」

理解するのに、テラには10秒以上要したようだ。

「フィリア、それは、つまり……俺を?」

テラの表情が驚き、戸惑い、照れ、真っ赤になる様は面白かったが、今まで散々してきたアピールがやっぱり通じていなかったことに腹がたった。
もうどうにでもなれ。
テラの胸ぐらを掴み、グッと引き寄せた。不意打ちなので筋肉質な長身でも簡単によろける。
数秒後、扉からバコンと開いた音がしたのでテラの服から手を離した。

「……私だって、責任とるから」

言い逃げのごとく早足で部屋を出ると、ゴトゴトッと盛大にずっこける音がした後、テラが名前を呼びながら追いかけてきた。

3.10.15

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