序章[3]
パレードは最高の盛り上がりを見せていた。
演者側も観客側もさっきまでの村長の演説中に見せていた疲れた表情はどこかへ行ったように楽しんでいる。
炎の精霊に扮しているのは学校に上がる前の子供たちだ。
赤い服に赤い布を纏い、くるくると回ったり跳ねたりしながら踊っている。
水の精霊に扮しているのは学校に上がりたての子供たち。
観客に水をかけながら見事な側転を決めて歩いていく。
大地の精霊に扮するのはもう少し年上の子供たちで、大きく地面を揺らすように行進していく。足を揃えるのがなかなか大変で、僕たちの代もかなり苦労した。
そしてパレードも終盤になると、いよいよ僕たちの同級生――村の子供の中でも最年長組が歩いてくる。
太鼓を叩いてリズムを刻む大事な役を担っているのが男子で、風の精霊を模したひらひらの衣装を着て踊って見せているのが女子。さらにその後ろから歩いてくる双子の女神……に扮した女子二人。
成人の儀をやることになった僕たちは毎日聖堂に通わさせられたけれど、やらない子たちには別の仕事があるというわけだ。
ちなみに昔から少し裁縫には自信がある僕は衣装作りを手伝った。
例えば、動きの多い風の精霊役の衣装にたくさんのリボンをつけて踊りの途中でなびくようにしたのは僕だ。
筋肉はというと、準備の最初のほうは皆で運ぶ山車の制作を手伝っていたけれど途中で飽きてやめたらしい。
「女神様たちが出てきたってことは、そろそろ聖堂に向かった方がいいかな」
観客に紛れてふつうにパレードを楽しんでいた僕たちだけれど、この後には大仕事が控えている。そしてその仕事をやる僕たちに対する村長や大人たちからのプレッシャーはパレード出演者の比ではない……なおさら、どうして僕たちがこの役目なのかさっぱりわからない。基本的にこの役目は神官によって行われる女神の意思を受けるための儀式――もとい、厳正なる抽選で決まる。噂に聞くことには村きっての問題児の選出に、女神の意思を絶対とするはずの神官たちが思わずもう一度くじをやり直したとのことだ。
しかしそれにしてももう一度選ばれてしまうのだから、これは奴が強運なのか、女神様の悪戯というやつなのか。
どちらにせよ僕としては変なことに巻き込まれたくない、ただその一心だ。
「早めに行かないと怒られるだろうし……って、おい何買い食いしてんだお前!」
さっきから無言の筋肉を呼ぼうと振り返ると、奴はむしゃむしゃと屋台で買ったらしき羊肉のタレ焼きを食べていた。なぜよりによってそれなんだ。儀式用の衣装が汚れたらどうする。
ところがそんな僕の中の疑問を一切無視して、奴は斜め上の応答をしてきた。
「おう、食べるか?」
「誰が食べるか!――そもそも僕たち儀式の関係者が買い物できるのは午後だろ!」
「えー、羊肉、お前嫌いだったっけ?」
「嫌いとかそういう問題じゃないから!!」
相変わらずこいつはどこかずれている。頭が痛くなってきた……。
そうこう言っているうちに、パレードは本当にフィナーレに差し掛かりつつある。これ以上のタイムロスはしたくない。
「もういいから、さっさと食べ終わってよ……」
「む。まあ、要らんなら俺がすべて食べよう。あ、あとで欲しいと言ってもやらんからな!自分で買えよ!」
「言われなくても自分で買うわ!」
儀式前なのにものすごく疲れるのはこいつとペアになったせいだ。本当、こいつと居るとロクなことがない。
- 4 -
前へ
|
次へ
目次へ
あと1センチ