とある日常 / 木ノ葉隠れの里

「…これ、そこの者。あんた不幸な相が出ておるぞ」

任務で訪れた村での出来事。
任務が終わり宿へ向かっている道で真っ黒な装束に身を纏った老人に声をかけられたゆう。

「…え、あの…一体どういう…?」
「とりあえずこの小瓶を渡すから何かあった時に飲みなさい、きっとその中身があんたを救ってくれるさね」

そう言って液体の入った小瓶を渡された。

「えっえっ、不幸って!?何が起こるの!?」
「あまりに無残な事でワシの口からは言えんのう」

頭を抱え声を低くする老人にゆうは身震いをしその場から離れ宿へと急いだ。

宿に着くなりすぐに着替え就寝の準備をする。

「…一体さっきの人は…、1人で任務の時に限ってこんなことになるからもう怖くて早く里に帰りたい〜〜っ」

仮眠をとり、すぐにでも里へ帰ることにした。







あれから数時間の睡眠をとり、帰り支度を済ませ宿を出た。
村から里まではそう離れてはいないためすぐに里が見えてくる。

まだ早朝のため里は静かだ。
門番の上忍に挨拶を交わし門をくぐる。


「…あれ、ゆう?もう帰ってきたの?予定では今夜辺りに帰るって言ってなかったっけ?」
「サクラぁ〜〜っ、怖くて速攻で帰ってきた。任務で行った村で黒装束の老人に不幸の相が出てるって言われて…」

早朝の散歩をしていたサクラとたまたま出会い、ゆうはすぐさまサクラに抱きつく。

「あーはいはい怖かったわねー」ってゆうの背中をトントンと叩き宥めてくれる。

ゆうはサクラから離れ老人から渡された小瓶をカバンから取り出す。

「その老人にこれ渡されたの、魔除けのお水とかかな〜」
「なーに言ってんのよ、こんなのただの水に決まってるじゃない」

鼻で笑い「試しに飲んでみれば〜?」なんて言ってくる。

「信じてないのー!?絶対このお水飲んだら幸せになれるやつだって!見てて」

そうして小瓶の中の液体を一気に飲み込んだゆう。

「どう?何か幸せになってきてる感じはある?」
なんて小馬鹿にしたようにサクラは笑う。

すると、

ボフッ

「ひゃっっ」

液体を飲み込んでから数秒後、ゆうは白い煙に包まれた。

「けほっけほ、ちょっとゆう!大丈夫!?」

サクラが手で軽く煙を払い、ゆうの周りの煙が薄くなってくる。
煙がなくなりゆうを見るサクラは目を見開き、口が開いたまま塞がらなくなっていた。

「けほっ、一体なんなのよーー」
「ちょ、ちょっとあんた、身体が…っ」

煙のせいで目が痛み目をこするゆう。
目から手を退けてからサクラの驚いた顔を見てキョトンとする。
サクラがゆうの身体を指差しながらふるふると身体を震わせているもんだから何だろうと思い自分の身体に目をやる。

すると、

「…っえぇぇぇ!?小さくなってるぅぅぅ?!」

背が縮み、着ていた服もだぼっとしている姿に驚きわたわたとするゆう。
サクラと同じくらいの身長のはずが子供の姿になっていた。
当然サクラも動揺が隠せず慌てて火影室へとゆうを連れて行く。







ーートントン

「…入れ」
「はい、失礼します」

扉を開け頭を下げるサクラに自分も合わせて頭を下げるゆう。

「何だこんな早くに。…サクラ、その横にいる子供は一体…?」
「早朝にすいません、簡単に説明しますと 任務から戻ったゆうがその任務で訪れた村で出会った老人に渡された小瓶の中の液体を飲んでこんな姿になってしまって…綱手様に診てもらいたいんです」

サクラの話を聞きゆうに目をやる綱手。
上から下まで見て口元に手を持っていき何かを考え始める。

「…すいません…まさかこんなことになってしまうなんて思っていなくて…任務の報告は後日改めてします」

「…んん、事情は分かったが事例がないからなぁ、さすがのアタシでも分からん」

綱手の言葉にガクッと肩を落とし落ち込むゆう。

「まぁ明日には戻るとは思うがとりあえず大事をとって今日は休め」

「ありがとうございます、失礼しました」と頭を下げ火影室から出る2人。


「…ど、どどどどうしようぅぅ!?こんな姿じゃみんなに会えないよ!」
「そうね〜とりあえず今日はわたしも1日予定がないからあんたの面倒を見てあげるわ」

「あれれ?そこにいるのサクラ?こんな早くに珍しいじゃない」

声のする方へと目をやるとそこには気怠そうに頭を掻きながら歩いてくるカカシの姿があった。


あ"ぁ"ぁ"なんてタイミングの悪い時に〜〜!!
こんな姿カカシ先生に見られたくないのに!!

「カカシ先生〜っ、いつも寝坊する先生が朝早くに行動なんて珍しいですね?」

「いやね、任務が早く片付いちゃったもんだからその報告に。…ところでその"子"は?」

ゆうはぴくっと身体を揺らしサクラの後ろへと隠れる。

「あっ、ちょうどよかった。大人のカカシ先生にお願いがあるんですけど、この子の面倒を今日1日見てもらってもいいですか?」

"大人の"というところを強調し、後ろに隠れたゆうの背中を押してカカシの前へと出す。

「ちょっ、ちょっとサクラ!?なんで!?」
「いいじゃなーい、それじゃわたし用を思い出したから。じゃあね〜」

そう言って手をひらひらさせ小走りでその場を去ってしまうサクラ。

取り残されたゆうとカカシはサクラが見えなくなるまでその姿を見た後、お互い顔を合わせる。

「…って事なんだけど、お嬢ちゃんは迷子?」
「…ちがう、先生本当にわたしのことわからないの?」

ゆうはじと目でカカシを見るとぽりぽりと頬を掻く。

「えーっと、ごめんね。アカデミーの子だったかな」
「ゆう!第二班のゆうっっ」

ゆうの名前を聞くなり普段見せない驚いた顔を見せゆうの周りを見て回る。

「本当にゆうなのか…?だとしたら一体何が…」
「いやまぁわたしが任務で訪れた村で知らない老人から渡された小瓶の液体を飲んだのがいけないんですけどね、綱手様曰く明日には戻るみたいなので」

はははっと苦笑いをして頬を掻く。

「とりあえずこんなところにずっといるのもあれだし、外に出ようか」
「他の人に会わないルートで!特に同期のみんなにこんな姿見られたくない〜〜!」


行くあてもなく2人で外へ出てまだ静かな里を歩く。

「今日1日どうするの?1人で過ごすには色々と不便だと思うけど」
「だからそのための先生なんじゃないですか、わたしのお守りしてくれるんでしょう?」

溜息をもらし「久々の休みだったのに…」と愚痴をこぼす。

「せんせーっおんぶしてよ〜歩くの疲れた〜」

更に先程の溜息より大きな溜息をもらし仕方なくゆうをおんぶする。

「やったぁ!たかいたかーーい!」

ご機嫌なゆうとめんどくさそうに歩くカカシ。


「そこにいるのはカカシではないか!…と、その子は一体…、まさかカカシの隠し子…!」

ゆうとカカシの進行方向から逆立ちのガイが現れてきてひょいっと飛び上がり2人の目の前へと立ちはだかる。

「「ちがう」」

2人して声を揃えて否定する。

「なら一体…、」
「まぁちょっとね、色々あって」

「じゃあ俺たちはこれで」と止めていた足をまた進める。
ゆうは後ろを向きガイに小さく手を振った。

「なっなんて可愛らしい子なんだ…!」







「わたしがカカシの隠し子って…どこらへんが似てるって言うのよまったく」
「ガイだからね、仕方ないよ」

ポカポカとカカシの頭を軽く叩くゆうを「痛いからそれやめて」と宥める。


「…あれ、カカシじゃない。こんなところで何してるの?」
「よぉ、任務から帰ってたのか。…ってお前その背中の子供…」

次に前から現れたのは紅とアスマだった。

「なーに、お2人はデート?」
「デート!デート!」

「ち、ちがうわよ!」と頬を赤く染めた紅は必死に否定する。
横にいるアスマは少し頬を染めてぽりぽりと掻く。

「で、一体その子は?任務先で連れてきたんじゃないでしょうね」
「違うからこれは。まぁ俺も色々あるの」

「お2人さんのお邪魔虫は消えますかね」と言い足を進める。









「なんか今日はやたら人に会うね?」
「ん〜確かに、そうかもしれないね」

「カカシさんじゃないですか、こんなところで何を…」
カカシを見つけ小走りでこちらへ向かってくるヤマト。
カカシにおんぶされているゆうと目が合い言葉に詰まる。

「おー、ヤマトか。お前はこれからナルトと修行か?」
「え、あっ、はい。ナルトがなかなか来ないので迎えに向かってるところです」
「あらそうなのね、ナルトのことよろしく頼むよ」

何か言いたげなヤマトにカカシはにこっと笑いその場からそそくさと退散する。








「ねぇ先生、ヤマト隊長何か言いたげだったよね絶対隠し子だとか言おうとしてたよね」
「まぁそんなところだろうけど、変な噂が流れてないことを願うしかないかな」

ヤマトと別れてからゆうがお腹空いたと駄々をこね始めたので食事処で昼食を取っていた2人。

ゆうは色々あり朝食を取れていなかったためばくばくと小さな口いっぱいにご飯を頬張る。

「ほらほら、誰も取らないんだからゆっくり食べなきゃでしょうが」

ゆうの口の周りに付いた米粒を取りながらやれやれとゆうを見るカカシ。
きっと周りからは親子に見えているんだろうなとゆうは思った。


「…はい、じゃあご馳走様してもう行くよ」
「はーーい。ごちそうさまでしたーー」
店主にバイバイ、と手を振り店を出る。


「あっ、カカシ先生〜!」
「こんなところで会うなんて珍しいっすね」
「カカシ先生も焼肉食べに行ってたの?」

店を出てすぐ猪鹿蝶の3人とばったり会ってしまった。

「え、あー、まぁそんなところかな。お昼時だしね」

するといのの目線はすぐさまゆうへと移る。

「やー!!何この子!可愛い〜!」
「ちょっいたい!」

頬ずりをしてくるいのを必死に押すゆう。

「ほらいの、その子嫌がってるよ。離してあげないと」
「そうだぜ、しつこい女は嫌われるんじゃなかったのか?」
「もぉ〜わかってるんだけどこの子があまりにも可愛いからぁ〜!…ってよく見たらこの子誰かに似てるわね…えーっと〜」

やばい、と思いゆうはカカシのズボンを引っ張る。
悟ってくれたカカシはひょいっとゆうを抱え上げ手を挙げその場を後にする。

「じゃあ俺たちはこれで、アスマによろしくね」








「…あっぶねぇ〜〜いのに気付かれるところだった」
「別に気付かれてもいいじゃない。自業自得なんだから」
「やーだ!笑われちゃうじゃん!」
「まぁ、シカマルは気付いてたと思うけどね」

うっ、と口を紡ぎ大人しくなる。
けどきっとシカマルのとこだから誰にも言わないはず、めんどくせぇとか言って。




「…はい、到着。ここが俺の家。とりあえず今日はここで大人しくしててね」

長い長い散歩を終え、部屋に着きカカシはゆうをソファへ降ろす。

「せんせーありがとう。お部屋殺風景なんですね」
「まぁね、必要最低限の物しかないから」

「ふぅん、」と部屋を見渡す。

カカシの家に着いて落ち着いたことと朝が早かったこと、昼食をお腹いっぱいに食べたため急な眠気がゆうを襲う。

うとうとと首をかくん、かくんとさせていたらカカシがベッドから毛布を持ってきてくれてゆうをそのままソファに寝かせ毛布を掛ける。

「んん…ありが、とう…」

ソファに横になったらすぅ、と寝息を立てすぐに眠りに入ったゆうの髪をそっとカカシは撫で、机へと移動をし報告書の作成を始める。


「今は子どもだからお昼寝はちゃんとしないとね」

ゆうに目をやり、また書類へと視線を戻す。
今日も里は平和だったな。