とりっく おあ とりーと / 青学

「みんなー!トリック・オア・トリート!」

部活中にも関わらず私は思い出したことを大声で口に出す。

とりあえず一番に反応したのは…手塚部長だ。

なんて私は運がないのだろうか、あーあ怒られフラグ立っちゃったよ。

私はびくびくあわあわしながらその場から動けずにいた。

「ゆう、」
「は、はひぃ!」

やべえ裏返った…!

てかそんなことより怒られるううううううううう。

「ほんの気持ち程度の量だが、これを」

そう言って飴玉を3つくれた。


…これは、夢なのか?
お、怒られなかったあああ!

「部活は怠るなよ」

ですよね〜やっぱいつもの手塚部長だったよ。

「い、いえっさー!」

「あ、僕からもこれを」

手塚部長が戻ってから入れ違いで不二先輩がやって来て小さな箱をくれた。

「ありがとーございます!中って何が入ってるんですか?」
「僕の手作りクッキーだよ。食べて感想を聞かせてくれるかい?」

「そんじゃさっそくいただきまーすっ」

私は箱を開け中の赤くて可愛い形のクッキーを手に取り、一口で食べる。

…って赤!?なんて思ったときにはもうすでに遅かった。

「か…からいいいいいいいいいいい!水!水プリーズなう!」

私はテニスコートの端でじたばたもがく。

「うーん、やっぱり他の人からしたらからいのかー。これでもけっこう唐辛子の量を控えたほうなんだけどな」

あれ、なんか今すごいカミングアウトが聞こえたんだけど。明らか確信犯だよね、半殺しにされたんだけど!笑顔の裏に隠れた危険なもう一つの顔をチラッと見てしまった…!

「お、おい!ゆうさん大丈夫か?!」

大石先輩が慌てながら水を私にもってきてくれた。
私は水を受け取って一気にがぶ飲みをする。

「ぷはーっ!大石先輩助かりました!」

ふっかーく頭を下げてお礼を言う。

「ああ、助かってよかったよ。今朝英二にも同じことがあってね…」


苦笑交じりに今朝の出来事を話してくれた。
それを聞いて私も苦笑をもらす。


「はは、ほんと今朝の英二のリアクションは大げさだったよね」
「不二…お前の料理は危険だ……」

ぼそっと言った今の言葉はきっと不二先輩には届かないんだろうな…どんまいです。

「おーい!ゆうー!俺もお前に菓子やるぜー!」
「俺もあるよー」

さっき打ち合いをしていた桃とタカさんがやってきた。

桃の手にはお菓子が大量に入ったスーパーの袋。
…いくらなんでもそれは多過ぎ。やっぱり桃はバカね。

それに比べてタカさんはキャラメルの入った可愛いラッピング袋をくれた。

すごいタカさん、ちゃんと女心というものをわかってるんだね!

「可愛いーっ、タカさんありがとうございます!」

にぱっと笑い受け取る。

「ほらよ、」
そして桃は袋からチョコやクッキーを出してどんどん渡してくる。

「わっふぉー、桃もさんきゅ!でもこんなに貰ってもいいの?」

「当たりめーだろ!お前は食いしん坊だしなー」
にししっと笑う桃に私はムッとして桃の頭をチョップしてやる。

「あだっ、何すんだよ」
むぎゅーっと私の頬を引っ張る。

「いはい!はなひへーっ!」
「何つってるかわかんねーよ」

桃をぽかぽか叩くが一向に離してくれない。

「…おい、それくらいにして離してやれ」
「何だーマムシ、正義の味方にでもなったつもりか、あ?」

私の頬をパッと離して海堂のほうへ行く。

や、やばいぞこれは!完璧喧嘩になってしまう…!

「二人とも喧嘩はしないで!部長が見てるから!」

お互いふんっと言って逆の方向へと歩いて行った。

まあ、うん。大事にならずに済んだ…。

「あー!ゆうちゃんはっけーんっ!こんなとこに居たんだーっ」

「はぎゅ!」
いきなり抱き付いてきた菊丸先輩にびっくりする。

いつものことだけどやっぱ慣れないなあ、それにやたら緊張しちゃう…っ。

「あれれー?頬っぺた真っ赤だにゃあ」

ふにふにと頬をいじる先輩にまた一段と頬を赤くする。

「も、もうっ、からかわないで下さいってば!」
「にゃははっ、めんごめんご〜」

そう言って私の頭をポンポンってして練習へと戻っていった。

…あれ?お菓子くれるから来たんじゃないのおおお!?

あっ、もしかして貰いに来たんじゃ…っ。そんで私がお菓子ないってことに気付いて戻ったのか…すいまっせん!ほんと、すいませんんんん!

菊丸先輩の去ったほうへペコペコ頭を下げていたら不二先輩が、


「大丈夫、英二には僕からお菓子をあげておくから安心して」
と言ってくれた。

「すいません不二先輩、菊丸先輩に謝っておいて下さいですはい」

「うん、わかったよ」

軽く微笑んで不二先輩も練習へと戻った。

私もそろそろ何かしないとなーなんて考えて思いついたのが部室の掃除。

はいそうですただサボりたいだけです。
部室なら部長の目もないからゆーっくりサボれるんだよねーるんるん♪

早速部室へと行き、バッと勢いよくドアを開けたら…中で越前が練習をサボってなんと寝ているではあーりませんか。

こいつ余裕こいてんなー、って思ってささっと越前に近付く。

そ し て 、寝顔をこっそり写メってやった。
へっへーんっ、これで越前が寝ていたという証拠ゲットー☆


「…ねぇ、何してんの」
「ふへっ!?」
「人の寝顔写メるって、たち悪いよね」

そう言って起き上がると何やらケータイをいじり始める。

そして画面を私に見せてきた。



「……っ!!」

こ…こいつうううう!何で?!何で私の寝てるときの写メあんの!?

越前の口角が上がる、そしてヤツは私に近付き、

「この写メ流されたくないならそれ、消しといてね」

こう言ってきた。

だから私は慌てて越前の寝顔を消して自分のも消すよう言った。

…が、しかしヤツが返してきた言葉に私の頭は真っ白になる。

「俺は消すなんて一言も言ってないけど」

はめられた、年下のこいつにまんまとはめられてしまった。

「あ、悪魔ーっ!」

「あ、そーだ、今日はハロウィンなんだしお菓子の代わりにこの写メでも先輩たちにあげようかな」

そう言い残し部室から出ていった。


「……い、嫌ぁあああ!!」

私の声はテニスコートだけでなく学校全体に響いたそうです、めでた…くない。