陽が落ちるまでに

「ちっ…、こいつの連れが探しに来よったみたいやで」

「チクられたらやばいんとちゃう?」

「チクれんようにしとけばええねん」


今、うちの周りではこんな会話がされとる。

やっぱあの声は廉造のやったんや!

この近くに廉造がおる…。
はよ、はようちを助けて…!


「廉造ー!」

うちは叫んだ。必死に。

「くそ、黙れ!」
またうちは口を塞がれた。
喋れんようなってしもたけど、さっきよりは怖ない。
廉造が近くにおるからや。


「しゃあない、今日はここまでや」

そう言うてあいつらはうちから離れて、体育館倉庫から逃げて行った。

うちは 助かった て、安心したんやけど まだ手足が縛られとることに気付いて不安と怒りが込み上げてきた。


「あいつら、絶対に許さへん。明日覚えとき」

ネクタイを外そうと必死にもがきながら低く呟いた。

けどネクタイは全く外れんかった。

外も日が落ちかけて暗なってきとる。


半分諦めかけとったとき、いきなり体育館倉庫の扉が開いた。

「…ぁ、はぁ…っ。名前…っ?」

うちが目を向けた先には、息を切らした廉造が立っとった。


「れ、んぞ…?」

不安から一気に安心へと変わったせいか、思考が上手く働かん。


「やっと、見つけた…っ」

廉造はうちに駆け寄ってきて腕のネクタイを外してくれた。
それからゆっくり抱きしめてくれはった。


すごく暖かい、これが廉造の温もりなんやな。


「うちを、探しとったん…?」

うちは声を絞り出して、廉造に聞いた。

「当たり前ですよ。一緒に帰ろうおもて名前のクラスに迎え行ったのに、おらんのやもん」

そっか、そりゃ心配するわ。
うちが廉造と一緒に帰らんかったときなんか、なかったしな。


それよりうちは、うちを探してくれたことが ホンマ嬉しかった。



「…ありがとっ」

うちは廉造のブレザーをギュッと掴んだ。

そうしたら廉造が、優しくうちの頭を撫でてくれはった。

廉造の大きい手が、うちの頭を包む。


「…なぁ、名前」

廉造がゆっくりと口を開いた。

やっぱ廉造に名前を呼ばれると、安心するわー。
なんて考える。

「ん、何や?」
考えながらにやけてしまわんよう堪えて返事を返す。

「あんな、俺んこと 誘っとるん?」

…はっ?
こいつは一体、何を言うとんねん。
アホちゃうか。

なーんて思うて「は?」って返したら、廉造がうちから離れた。
そんで
「自分の格好、よう見てみ」
って言うてきた。
せやからゆっくり目を下にやったら、制服がはだけて下着が見えとった。


「き…、きゃぁぁああああ!」


夕暮れの体育館倉庫には、うちの悲鳴が響き渡ったと同時に廉造の頭を殴る音も響いたとさ。

めでたし、めでたし。


…て、ちっともめでたないわボケェエ!





―――――……

次の日うちは、昨日の奴らをぼっこぼこにしてやった。