馬鹿と天才

ついに今年も、とうとうこの週間がやってきてしもた。

廉造からしたら、地獄の週間。


…そう、うちらの学校はもう少しで中間テストやねん。

テスト一週間前になると部活動が停止となり 勉強に集中をさせる、この週間。


みんなが勉強すると思うねんけど、うちはせーへん。

ん、何でかって?

そら日頃から復習をしっかりしとるからや。

今年は受験を控えとるさかい、みんなは本気やと思う。

うちかて一応本気で受けるつもりやで?


問題はあいつや、
志摩家のドスケベ野郎。

毎年うちに泣きついて来んねんけど、そろそろ一人で勉強出来るようにさせなあかん。

せやから今年は勉強を教えへん。
廉造が赤点取ろうがうちには関係ないんやしな。


いやいや、うちは薄情な女ちゃいますよ?

日頃から勉強をしてへん廉造が悪いんや。

将来、うちらは同じ高校に行こうて決めとんねん。

せやから廉造にも頑張ってもらわな。

いざとなったら、まぁ、教えたるけど。



「…以上でホームルームを終わる。真っ直ぐ家に帰るように、解散」

担任がそう言い、みんなが帰り始める。

そしてテストまであと1日と控えた今日が終わり、テストはいよいよ明日となった。


うちは、廉造が迎えに来るんを席に座って待つ。


「ねぇ、名前ちゃんっ。今って時間あるかな?」

うちがボーッと席に座っとったら、クラスの女子が話し掛けてきよった。

「ありますえ」うちがそう返すと、その子は数学のノートを出した。

「ここの問題なんだけど、やり方がよくわかんなくてできないの…」

そう言うてきた。
今日習うたところが分からんらしい。

けどうちからしたらこない問題、お安い御用や。


「ここにある数字を、この公式に当て嵌めて考えてみ? そうしたら答えが出てくるさかい」

うちは自分のノートを出し、彼女にわかりやすくやり方を教えた。

教えたいうても、うちのノートに書いてあることをそんまま言うただけなんやけどな。


「…あっ!できたっ! ありがとうっ」

そう言うて彼女は自分の席に帰って行った。


「しっかし、相変わらず頭ええなぁー」

すぐ後ろから声が聞こえ、振り向く。

するとそこには壁に寄り掛かっとる廉造の姿があった。

「あれくらい簡単やし、」

本当にうちは可愛いげがないと思う。
素直にありがとうて言えばええのに、言えへん。

つんつんしてばっかりや。


「俺にも勉強、教えたって下さい」

やっぱ言うてきたか。
いつものうちならここでOKを出すんやけど、今年のうちはいつものうちとちゃう。

せやから答えはNOや。

「今年から自分で勉強し」

よし言うてやった!
それから廉造の顔を見ると、目をこれでもかってくらい開いとる。

なんやねん、それ。
新しい顔芸か何かかー?
て、笑うてやりたい。いますぐ。


「なん、何でですの!? 俺を見捨てんで下さい!」

と言い、うちのクラスで泣き始めよった。

あかん…、みんなの視線が痛い…っ。

とりあえず、はよ廉造を教室から出さな。

「今日はもう帰んで」

うちは廉造引っ張って教室を出た。

廉造は廊下を引きずられながら、まだ泣いとる。

…て、お前はおもちゃを買うてもらえへんかった子供か!

「いつまで泣いとんねん!」
イライラがMAXに達したうちは廊下でキレた。

そうしたらようやく廉造は泣き止みよった。
けど、今度は廊下に座り込んでしもた。

「名前が勉強を教えてくれへん言うんやったら…、全校生徒にあの事、言いますえ?」

あの…事……?
一体何を言うつもりなんだこの男は。

…ん、いや待てよ。
もしかするともしかするかもしれない…!

まさか廉造があの事を覚えとるやなんて…。


たぶん廉造が言うつもりなのは、うちが去年の夏に志摩家で下着姿で寝とった事やと思う。

ってかまあ、そこまでやったらまだええと思うやろ?

それが残念なことに、まだ続きがあんねん。
それはな…、下着姿+涎垂らしながら寝とったっちゅー事や。

たしか金兄が悪戯で写真も撮っとったような…。

あかん!こないなこと全校生徒に知られたらうちはもう生きてけん…っ。


これだけは絶対に阻止せな!


「し、しゃあない。教えたるさかい今日廉造ん家行くで」

廉造を見たら何故かニヤニヤしとる。ん?って思うたけど、うちは廉造の作成にまんまとはまってしもたことに気が付いた。
やられた…!と思うたけど既に遅し。

「ほな、急ぎましょ」

うちの腕を引っ張りながら廉造は走り始めた。
うちは軽く引きずらる形となる。

「ま、待ちぃ!うちを騙したんやろ!」

学校の玄関にも関わらずうちは大声で叫ぶ。

そうしたら廉造は ケロッとしよって、

「別にー?何を考えたのか知りませんけどもう勉強教えたる言うたんやから、後戻りは出来ませんよ?」

く、くそぉぉぉおお!
なんやねんこいつー!

…でも、しゃあない。
教える言うたんやから教えたるか。

そうや、適当に教えてすぐ帰ればええねんっ!
よし、そうしよ。


「はいはい。で、何の教科がわからんねや?」

どーせ数学なんやろ。
うちはそうおもた。
けど、廉造の口から出た言葉は…、


「英語と科学と世界史と1番嫌いな数学や!」

んな、一日で4教科なんか教え切れるはずないやろぉお!
アホか!いや、こいつは元からアホやったな。

いや、そうやなくて!
テストは明日やねんで!?

まあ、うちは焦って勉強せんでもええんやけど。


…しゃあない、徹夜するしかないみたいやな。

よし、寝よったら殴ったるか。