貴方の温もり

今日はいよいよ、テスト初日や。

テストは数学と物理と日本史の三つ。
せやから午前で学校は終わりなんや。


うちの予想では今回のテスト、全教科90点以上。

しっかり勉強したさかい、かなり自信あんねん。

廉造はどうやろ、昨日あんだけ数学は頑張ったんやし70点は軽々いけるやろ。

いってへんかったら大声で笑うたろっと。



9時になり、テストが開始した。

数学、物理、日本史の順にテストをやり、ようやくテスト一日目が終わった。

自分的にはちゃんと解けたと思う。

ケアレスミスさえなければ完璧やな。

そう考えながら帰る支度をしとったら、廉造が迎えに来てくれはった。


「帰る支度はもうええ?ほな、行きましょか」

「…待ち。この手は何や」


指を絡めるように繋がれた、うち右手と廉造の左手を見て言う。


何でこない繋ぎ方やねん!
っちゅーな何で繋ぐねん!


「何て、はぐれんようにするためや」

「学校なんやからはぐれても大丈夫やろ」


しっかり繋がれた手は、なかなか離れへん。

ギュッと握られとってなんだか少し恥ずかしい。


「あかん!人が多いから絶対はぐれる!」

こいつはアホか、アホなんか、え?

ちゅーか万が一はぐれたとしてもケータイがあるやろ。


「はいはい、うちはよ学校から出たいねんけど」


こんなところをいろんな人に見られるんが嫌やったうちは廉造を引っ張って歩きだす。

周りを見たらコソコソ何かを話しとる女子のグループが目に入ってきよった。


廉造は一応かっこええからモテる。
せやから嫌やねん、こういうん。


昔っからうちらは仲がええさかい、うちは女子たちにいろいろなことを頼まれた。

好きな人おるか聞いてとか好きなタイプ聞いてとかばっかり。

そんなん自分で聞けばええやろ。


前に一度、うちと廉造がずっと一緒におるから付き合うとるて勘違いされて女子たちにイジメられとったことがあったんや。

あん時はほんまつらかった。

けど廉造には話せんくて一人でずっと悩んどった。


まぁ、付き合うてないってちゃんとわかってもろうてからはイジメはなくなったんやけどな。


あれから少しトラウマやねん。



廉造と学校で二人っきりでおるの。




「ちょ、何そないに急いではるの!?」


廉造の声にハッと意識を戻したうちはその場に立ち止まる。

うちは早めに歩きながら昔の嫌な記憶を考えとったらしい。


「すまん。ボーッとしとったみたいやわ」


俯き小声で廉造に謝る。
申し訳ない気持ちと不安な気持ちとで自然と小声になっていく。



「別にええですよ。何か嫌なことでもあったん?相談なら乗りますえ」


「う、ううん。何でもないで。ほんま大丈夫やから!」


何も悟られんよう必死に声を出す。


廉造にだけは心配かけたくないんや、うちは。

せやから、ごめんな…。
今は言われへんねん。


お互いが大人になって、話せる状態になったら話すさかい、それまで待っとってほしい。




「名前には俺がおる。やから何かあったら言うてな」


そう言うと廉造はうちをギュッと抱きしめてくれた。


誰も居ない校内で、うちは廉造に抱きしめられながら涙を流した。