どんぐりの背比べ / 燐
「はぁぁああ!??!燐の方馬鹿じゃん!!!」
教室に響くゆうの声。
そしてもう一つ、反発する声が。
「お前の方が馬鹿だろ!!!!!」
何でわたしたちが口喧嘩をしているかというと…
〜10分前〜
「はぁーあ、雪男の授業そろそろだー、薬学とか全くついてけない」
「お前いっつも雪男の授業は寝てるもんなー」
そう言って燐はけらけら笑う。
別に好きで寝てるわけじゃない、雪男の授業がなんかこう呪文で眠りを誘うというかそんな感じのあれだよ。
「そんなこと言って、燐だってぐーぐー寝てるじゃん。色んな授業で」
べーっと舌を出して挑発をするゆう。
すると燐は得意げに、
「いいんだよ俺は!座学より実践派だしな」
と鼻を高くして言った。
別にわたしだって実践が出来ないわけじゃない。
ちょっと体力がなくてついていくだけで精一杯なだけ。
「でも知識がなかったら実践でも役には立たないんじゃないの〜」
むっとして嫌味っぽく言ってしまった。
すると燐の表情は変わり、怒り始めたのが分かった。
感情を抑えられないタイプだもんなー燐は。
バンッと思いっきり机を叩き、その場に立ち上がる燐。
横に居たしえみはびっくりして丸い目で燐を見て、出雲は呆れたような顔をして目を逸らす。
勝呂は睨んで何かぶつぶつと小言を言っている。
その後ろで志摩はあらら〜と顔を引きつらせ、子猫丸はとりあえず勝呂をなだめる。
「お前この間の小テスト23点だったじゃねえか!何が知識がなかったら実践でも役に立たねえだよ!知識も実践力もねえお前に言われたくねえな!」
…は?
ちょっと燐、今何て言った?
燐の一言で一瞬で凍りつく教室の雰囲気。
かっちーん。
もういい加減わたしも怒った。
普通そこまで言う!??!
悪かったわね役立たずで!
そして、燐からゆうにトドメの一言が。
「お前、頭良さそうにしてっけど実際俺より馬鹿だよな」
真っ直ぐわたしを見て言った言葉。
その言葉は思いっきりわたしを貫いた。
「はぁぁああ!??!燐の方馬鹿じゃん!」
……と、今に至るわけですが、人を役立たずで馬鹿呼ばわりとは許さない!
「燐のばーか!あーほ!」
「ゆうのばーか!鈍まー!」
バチバチと火花を散らして歪み合う2人。
誰も止められるような感じではない。
しえみも止めようとしているが間に入れなくてわたわたしている。
「2人とも、その辺にしてはどうです」
いつもよりも低い声が教室内に響く。
わたしたちはぞっとして声の方を向くと、そこには怒りを露わにして立っている雪男の姿があった。
「昨日の小テストの結果、ゆうさんは34点、兄さんは30点。僕からしたら2人とも十分馬鹿です」
テスト用紙をゆうと燐の目の前に出して呆れながら怒る雪男。
用紙を受け取って小さくなるゆうと燐。
「胃が痛いよ」
雪男のトドメの言葉にわたしたちは席にへたり込んで、
「「す、すんません…」」
と弱々しく謝った。