方言ってなんかいい / 京都組
「いーなーわたしも方言で喋りたい!〜やで、とか自然な流れで使いたい!」
「勝手につこたらええやんか」
けっ、とめんどくさそうにゆうをあしらう勝呂にむきーっと怒る。
「違うだめ!方言がいいの!エセなんてやなの!」
「何やねん面倒くさいやっちゃなー」
そう言いながらも教科書から目を離さない勝呂。
「ほんならええ考えがありますえ」
にやにやとしながらわたしの腰に手を回してくる志摩。
「あっ、ちょ、手っ!」
パシッと志摩の手を叩くが腰から手を離さない。
「志摩さん…」と呆れるのは勝呂の隣にいる子猫丸。
「どうせ志摩の言う事や、ろくなことやないで」
志摩をスパッと切る勝呂。
なんというか、こっちまで気持ちがいい。
「そんな坊っ!まだ聞いてへんのに決めつけはあかんで!」
むぅっと反抗する志摩。
「いいから早く言ってみてよー何なのー」
わたしの催促に、待ってましたとでも言わんばかりの顔になり志摩は口を開く。
「ーー…俺ん嫁さんにならはったらええんや!そーしたら実家は京都やし自然と方言出るやろ?」
最後にはウインクをし親指まで立てて言い切った。
ポトっと持っていたシャーペンを落とす勝呂。
目を丸くして志摩を見る子猫丸。
そして 開いた口が塞がらずあぽーと口を開けたまま固まるゆう。
「ん?みんなしてどないしたん?」
こいつは一体清々しい顔して何を言ってんだ。
わたしたち3人が思った事はこれだ。
「ねえ勝呂、子猫丸くん。わたし、やっぱり方言はいいかな。無理して使うものじゃないもんね」
「え、えぇ。そうですよ、もしかしたらゆうさんの実家にも方言なるものがあるかもしれへんし、両親に聞くとええんやないかな」
「志摩んとこ嫁ぐくらいやったら方言は諦めた方ええで」
「んなっ!3人してひどいわ〜〜っ!俺かて真剣やったんやで?ゆうちゃんが他んとこ嫁がれへんかと思て言うたのに…大火傷や…」
大袈裟に項垂れて泣くフリをする志摩。
…ってちょっと待て。
今さ、さらっと志摩がわたしに対して毒を吐いたような気がするんだけど。
わたしが、他の人のとこに、嫁げ、ない、だと?
んんん?いつからこいつはわたしのことをそんな風に見てたんだよこのやろう。
「志摩、許さない」
ぺしっと腰の手を退かし、わたしは志摩のおでこに思いっきりデコピンを食らわせた。
「いったぁ!」とおでこを抑える志摩にあっかんべーと舌を出すゆう。
「そんなプロポーズじゃ、誰も落ちないから」