缶ジュース / 廉造
外ではセミがうるさい。
それにこの日差しの中外に一歩でも出たら絶対焼けるよね絶対。
だから絶対に今日は外には出ない。
ほらあたし一応女の子だし?
美白を目指してるからさ!
〜〜♪
なーんて事を考えていたらケータイに着信が。
あたしはケータイに飛びついて電話に出た。
「もっしもーし。只今夏バテ中のゆうでーすっ」
とちょっとふざけた感じで電話に出てみたのだが電話をしてきた本人はというと
「知っとりますけど、」
となぜか冷たい返事が返ってきた。
あれ、なんか冷めてるぞこいつ。
何、あたしこいつに何かしたっけ?
「何かご用ですかー」
「今ひま、ですよね。散歩行きましょ」
おぃぃいいい!
こいつ人の話ちゃんと聞いてねえのかコノヤロー!
夏バテ中っつっただろ最初にぃいいい!
しかも何であたしがひましてると決め付ける!
まあひまだったけどなんかむかつくんですけど!
「夏バテで忙しい」
よし言ってやった!
これで暑い外になんか出なくて済むぜ!
「あー、せやなあー、うーん…」
廉造が何かを言いかけて口を止めた。
何だよ、気になるから早く続けろ!
苛々するだろピンク!
「何、」
「え、何がです?」
…こいつ、何なんだよ一体!
何故あたしに聞き返したんだよ!
「だから、何を言いかけたの。10秒以内に言わなかったらお前が大事に取って置いてた期間限定のポテチ食べるからな」
よし!
今度こそあたしの勝ちだ!
これなら廉造は絶対に言うよね、てか言わないわけないもんあいつポテチ好きらしいし。
「しゃあない、じゃー言いますよー?…部屋の窓、開けてみて下さい」
ん?部屋の窓だって?
え、何で?
クーラーつけてんのに窓開けたらせっかくの冷たい空気が家出しちゃうじゃん。
「めんどくさーい」
「開けたらええもんがありますえ」
ええもん、だと…!?
それはどんなもんだ!
やべ、気になってきた。
仕方ない、開けてやるか。
あたしはゆっくりと窓に近付いて窓を開ける。
「んひゃっ!」
窓を開けた瞬間、頬に冷たいような温いような感覚がした。
「やーっと開けてくれはった」
額に軽く汗が滲んでいる廉造がフラフラと立ち上がった。
「…な、んで?」
「何でて、出て来はるんずっと待っとったんやで」
うそ…
廉造が、あたしを…?
何さ、ばか…っ
「…熱射病になる、」
「大丈夫大丈夫。体だけは強いさかい、熱射病になんか負けませんて」
廉造はへらっと笑うと持っていた缶ジュースをあたしに渡してくれた。
「これ、もう温うなってしもたかもしれんけど、まあ貰って下さい」
あたしの手とジュースを優しく包みながらそっと握る。
優し過ぎだよ、ばーかっ。