白黒つけようか / 双竜
「黒だ」
「いーや!白だ!」
店内とも関わらず喧嘩を始めるスティングとローグ。
「もう何でもいいからさ〜早くしてよ〜。わたしお腹空いちゃったんだけど」
近くの椅子に座り2人の言い合いが終わるのを待っていたゆうは痺れを切らせて2人に言葉をかける。
「何でもいいとは聞き捨てならん」
「そうだぜゆう。ここで今まで俺たちが抱いていた疑問の白黒をはっきりとしてやる」
ばちばちと火花を散らす2人に溜息がでるゆう。
…ん?あー、どうして2人が喧嘩してるかって?
本当は今日ユキノと洋服を買いに行く予定だったのよ、でもお嬢にユキノを取られちゃってね…。
1人で行こうとしたらスティングが「俺が付いていってやるよ」なんて言ってきたから荷物持ってもらうのにちょうどいいと思ってオッケーしたの、そうしたら何故かローグまでくっついてきちゃって…。
お店に着いて早々2人がお前にはこれが似合うって持ってきた服の色がまた正反対でさ〜。
白だ、いや黒だなんて店内にも関わらずぎゃーぎゃー口喧嘩を始めちゃって今に至るって感じなんだよね。
「…どっちも買えばいいじゃんか〜、それじゃダメなわけ?」
「「ダメだ」」
ゆうの問いかけに即答をする2人。
「同じ服でただ色が違うだけでしょ?どっち着ても同じだと思うんだけど〜」
「いや違うな、お前にはこの色が似合ってる」
「はぁ?何言ってんだよローグ。こいつは黒なんかより白の方がいいに決まってんだろ」
また更に騒ぎ始める2人に呆れたわたしは朝から立ち上がりスティングとローグが持っていた服ともう1着、掛けてあった服を持ちレジへ向かった。
ゆうの行動に目を丸くした2人は会計をしている間ポカーンと間抜けな顔をしていた。
「はい、これがローグでこれがスティングの。そしてわたしのがこれ。異論は認めない」
買ってきた服を2人に渡す。
「これでいいでしょ?スティングが白、ローグが黒。そしてわたしがグレー。3人でお揃い、文句は受け付けないから!」
びっくりして顔を見合わせるローグとスティング。
さっきまで喧嘩していたのが嘘のような光景だ。
「いやでもこれ…」
「これを俺に着ろと言うのか…?」
渡された服をまじまじと見ながら2人は自分の体にあててみたり引っ張ってみたりとしている。
「気に入ってくれた?」
「いやお前気に入ったも何もこれって…」
「女物の服ではないのか?」
「え?そうだけど?でも2人とも似合うから問題なし!」
けろっとした返しに2人は落胆と同時に笑い出す。
「…くっはははっ。やっぱりお前には敵わねぇわ!」
「…お前には何か不思議な力が宿っているのかもしれないな」
ローグとスティングはゆうの頭に手を乗せる。
ゆうは ん?と2人の行動に頭にはてなマークを浮かべた。
2人がいつも通り仲良しに戻ってくれたことが嬉しくてえへへっと笑い2人と手を繋ぐ。
「ギルドに戻ろっか」
「あぁ」
「そうだな」
この幸せが、これから先ずっと続くといいな、って最近すごく思う。
スティングがマスターになってから今のギルドは凄く温かくてみんな大切な家族。
わたしの憧れていたギルドの形。
この幸せ、大切にする。
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そしてわたしたちはギルドへ帰ってきた。
帰ってくるならフロッシュとレクターがとてとてと走ってくる。
「スティングくん!!おかえりなさい!」
「ローグ、フローいい子にしてたよ」
スティングもローグもレクターとフロッシュをそれぞれぎゅっと抱きしめたり撫でたりと微笑ましい。
「スティングくん、これは何ですか?」
「ん、あぁこれか?ゆうが俺たちにって買ってくれたんだ」
そう言って袋から服を取り出して広げてレクターに見せる。
その途端レクターは硬直する。
「…ローグも、これ着るの…?」
「あぁ、せっかくの貰い物だからな。…似合うか?」
フロッシュはふるふると体を震わせゆうの後ろへと隠れてしまう。
ローグとスティングは「どうしたお前たち?」と言い不思議そうな顔をしている。
「ゆう、2人に一体なにがあったの…?」
「そそそっそうですよ!スティングくんにまさか、まさかこんな趣味があったなんて…!」
「…!?ばっ!ちげぇよレクター!」
2人が何に引いているか気付いたスティングは必死に誤解を解こうとする。
「ふっ、全くだ。フロッシュ、俺がこれを着るように見えるか?これはゆうの物だ」
「そっそうだぜ!まんまと騙されたな!はっはは」
慌てて手振り身振りで弁解をする2人が面白くてゆうは声を上げて笑い出す。
「元はと言えばお前の…!くそっ笑ってんじゃねえ!」
「はははっごめんて〜!なんか必死な2人が面白くてっ。2人がわたしのこと1人にしてずっと喧嘩してたのがわるいんだからね〜」
2人に向けてべーっと舌を出す。
するとローグもスティングも声を上げて笑う。
レクターとフロッシュは顔を見合わせて2人に釣られて笑う。
ギルドは今笑いで包まれとても賑やかになった。
「お腹もうぺこぺこで限界だから何か奢ってよね」
そう言ってゆうはニッと笑う。