ケーキ作り / ジュビア

「ゆうさん、お願いがあります」
ぐいっと肩を掴まれていつもより遥かに強張った顔をしているジュビア 。

「えっあっお願いってなんでしょうか」
「実は…今日はグレイ様と出会って473日目の記念日なんです。なのでグレイ様にケーキをお渡ししたいのですがジュビア どうしても料理が苦手で…」

こんな風にもじもじしながら頬を赤らめているジュビア は毎日見ている。
そう、2人の記念日は毎日更新されているからだ。

確か昨日はルーシィとプレゼント探しに街へ行ってたっけな〜。
それがまさか今日はわたしのところに来るなんて…。

「いいけど苦手ってどのくらい苦手なの?」
「キッチンを破壊するほどに苦手です」

いや、あの、それにこにこしながら言うことじゃないですからね!?
むしろ危険なんじゃ!?

「どうしたらキッチンを破壊しちゃうの!?飛び道具使ったの!?」

疑問に思う点はいくつかあるがまぁやってみようとりあえず。







〈 妖精の尻尾 ギルド内厨房 〉

ミラさんに使用許可を得て早速わたしたちはケーキ作りに取り掛かる。

「じゃあまず材料を混ぜて行くからそこのボールに卵と牛乳と薄力粉をレシピの分量通りに入れていくよ」
レシピを見ながら調理器具の使い方を教えてゆっくりとジュビア にしてもらっていく。

「はい、次はボールに入れた材料を"優しく"混ぜてね」
「どうして今 優しく のところを強調したんですか」
「いやジュビア の事だから勢いよく混ぜるんじゃないかと思って」

言った通りジュビア は優しく材料を混ぜていく。
混ぜ終わったものを型に流し込んで、ジュビア が材料を混ぜている間にわたしが予熱しておいたオーブンへと型を入れて時間通りに焼く。

「どう?何となく作り方は分かった?」
「はい、案外簡単なんですね。グレイ様喜んでくれるでしょうか…」

グレイに渡した時の反応を妄想しているのか、一人で「きゃー[V:9825]」なんて言い始めてわたしはそんなジュビア をただただ見ていることしか出来なかった。

ほんとジュビア ってある意味すごい才能を持っている気がするよ…。

ピーッピーッ

オーブンから焼き上がりの音が聞こえオーブンを開けると、ふわっと甘くて美味しそうな香りがした。

「んん〜!いい匂い!これは大成功だね!」
「はい!これならきっとグレイ様も…」
とまた妄想世界へと入りそうなジュビア を制止して最後の仕上げに入る。

あらかじめ作っておいた生クリームを塗り、スライスしておいたいちごを並べて完成!

見栄えは凄く綺麗でお店に並んでいてもおかしくない程に完璧に作れた。

「ジュビア こんなに美味しそうなケーキ初めて作りました。ゆうさんどうもありがとうございます!」
「いいって!それより早くグレイに食べてもらおうよ!」

わたしたちはこのケーキをギルドのカウンターまで持っていきグレイがいるか探した。

グレイはギルドにいたが何やらまたナツと揉めている。

「あらら〜あれじゃ今は呼べないね」
「いえ、ジュビア このケーキ今すぐ食べてもらいたいので連れてきます」

そう言ってナツとグレイが掴みあっている中に入っていくジュビア 。
その様子をあわてながらわたしは見守っていると、ジュビア はグレイの腕にしがみつきそのままナツから引っ剥がして連れてきた。

何という力でしょう…これが恋する女の力か…。

「さぁさぁグレイ様っ、このケーキを食べてくださいっ」
「俺は今ナツと喧…ぐむっ」

ジュビア は一口分フォークで取って無理にグレイの口の中は押し込んだ。
最初は苦しそうだったグレイももぐもぐと噛み始めたら表情がガラッと変わった。

「うめぇ!このケーキすごくうめぇぞ」

大喜びのグレイ。
そんなグレイを見てジュビア もすごく嬉しそうだ。

「何、このケーキは2人が作ったのか?」

どれどれ私も頂こう、と何処からともなくエルザがやってきてケーキを勝手に食べ始めた。

「えっ?ケーキ?あたしも食べるー!」
「あら、ケーキ作り成功したみたいねっ」

次にルーシィがやってきて、ミラさんもにこにこしながらやってきた。

「このケーキ、お前らが作ったのか?」
「ううん、ほとんどジュビア がグレイの為にって作ったんだよ。わたしはちょっと教えただけ」

ジュビア は赤くなりもじもじする。
可愛いな、恋する女の子って。

ジュビア 見てると恋をしてみたくなる。
でもわたしにはまだ早い気もするんだよね。

今はこうしてみんなとわちゃわちゃ楽しい毎日を過ごしていたい。

そしていつか大切な人ができたら…なんて。

その時はジュビア に色々とアドバイスしてもらおーっと!