飲酒禁止令! / グレイ
「なーにゆう〜?あんた全然飲んでないじゃない。あたしの酒が飲めないっての?」
「そ、そうじゃないんだけどー…グレイに止められてるから…」
そう、わたしはお酒を飲み始めたら潰れるまで飲んで記憶をなくすタチの悪いタイプだ。
このせいで仕事先の飲み屋で酔って暴れてギルドに請求書が届いたこともありマスターにこっぴどく叱られたこともあった。
みんなで飲んでた時は過去の失敗を思い出して大泣き。
そしてつい先日、グレイと仕事に行った時早く仕事が片付いたので近くの街で観光がてら休息を取ることにした。
ホテルの近くには飲み屋がいっぱいありわたしたちは適当に選んで店に入ってご飯を食べていたの。
もちろんお酒も飲んだよ。
いっぱい飲むと酔って大変なことになると思って控えようとしたんだけどやっぱり飲んでるうちに歯止めが効かなくなってしまってつい酔っ払うまで飲んでしまったみたいで…
そんなわたしを見兼ねたグレイはわたしを肩に担いでホテルまで運んでくれたらしい。
そこで事件は起きたの。
わたしをベッドに寝かせて横のベッドに行こうとしたらグレイの腕を掴んで力一杯引っ張った、すると急な出来事でグレイはベッドの上でゆうを組み敷く形となってしまう。
グレイは顔を赤くして急いでベッドから降りようとするがゆうは腕を離さない。
そして酔って火照っているのかいつもより甘い顔でグレイを誘う。
グレイは平常心を保てと自分に言い聞かせ理性を保つ。
離してくれないのならそのまま寝かし付けようと思い横に寝そべりゆうの頭を撫でる。
頭を撫でられるのがあまりに心地よく、ゆうはそのまま眠ってしまった。
安心したグレイはそのままゆうの横で眠ってしまった。
そしてゆうが朝目を覚ますと横には下着しか着ていないグレイの姿が。
これが彼の通常スタイルのはずなのに寝ぼけていたことと昨夜のことが全く思い出せないということもありあらぬ事も考えてしまう。
横でわたわたと動いていたせいかグレイは目を覚ます。
そして顔を真っ赤にしているゆうを見てまだ酔っているのかと思い頬に手を当ててくる。
その行動にびくっとし身体を震わせるとグレイは慌てて手を離す。
覚悟を決めグレイに昨夜の出来事を聞いてみると、自分が思っていたこととは全く別の答えが返ってきて少し安心した。
でもこの事もあり飲酒はグレイがいないと禁止になってしまったんだ。
…別に付き合ってるわけじゃないのに。
………とまぁそんなこんなでカナともう飲み比べができなくなっちゃったんだよね〜。
「宅飲みだったらいくらでも付き合うから!ごめん!グレイがいるところではお酒飲めないの!」
「ったくよぉ〜付き合ってもないのに何束縛されてるわけ〜?いいから飲んじゃえって、あたしからグレイに言ってやるからさ」
そう言ってわたしのグラスにお酒を注ぐ。
目の前のお酒に喉を鳴らして見つめる。
手は自然とグラスへと進み身体がお酒を欲しているのが分かる。
「…おい、何飲もうとしてんだよ」
今か今かとお酒を飲もうとしている瞬間、その声にわたしははっとする。
声の方を向くとそこにはやはり今は顔を合わせづらい人物がいた。
「あんたさ〜どうしてそんなにゆうを束縛するわけ?付き合ってないじゃん」
「そりゃこいつが危なっかしいからだ。付き合ってようがなかろうがこいつと俺はガキん時から一緒だからほっとけねーんだよ。…お前だってそうだっただろ」
そう言ってゆうの待っていたグラスを取り中のお酒を全て飲み干す。
「本当にあんたって昔っから不器用だね、そんなんじゃ気付いてもらえないかもよ〜?」
カナがグレイを肘でつつく。
わたしにはどうして2人がそんなことになってるのか分からなかったけど2人はやっぱり昔から変わってないなって安心した。
「ほら、お前明日仕事なんだろ?エルザにお守りしろって言われちまったからこれから準備しに帰るぞ」
そう言われグレイはゆうの腕を引きギルドからでる。
「えっちょっ待ってよっ。明日の仕事簡単だから1人でも大丈夫だよ?!」
「お前を1人にさせんのは心配なんだよ。どんな仕事であれ1人では行かせねえ」
「すごく嬉しいんだけどさ、明日の仕事…雑誌のグラビア…」
それを聞いたグレイは立ち止まり「そんなん聞いてねえよ!!」と叫び地面に膝をついた。
だから1人で行こうと思ってたんだけどな…。
「いやでも色んな意味で心配だから行く、変なやつに集られてたら俺が守ってやらねぇとな」
立ち上がったグレイはわたしの腕を引いてまた歩き始めた。
同じ歳でギルドに入ったのもそんなに差がないわたしたちだけどグレイはわたしをいつも気に掛けてくれる。
ギルドのみんなは家族、ならグレイはわたしの兄のような存在かな。
わたしもいつかグレイの役に立てるように頑張らないと。
その時はいっぱいわたしに甘えてきてね。
そんなことを思いながらわたしはグレイの後ろ姿を見つめた。