2番目の女 / スティング
とある日の昼下がり、騒がしいギルドの中でまた更に騒がしい一角があった。
「ちょっと!今日はわたしの仕事手伝ってくれる約束じゃん!何でローグと仕事行っちゃったわけ!!」
目をつけていた依頼書を握り締めながら2匹のネコに怒りをぶつけるゆう。
「スティング君も物忘れが激しいですからね、はい」
やれやれとジェスチャーを交えてレクターは返事をする。
「フローもそーもう」
レクターに続いてフローも手をあげながら言う。
「つい昨日だよ!?そんな昨日の事も忘れるなんてニワトリ並みじゃん!」
「でも、すぐに片付けて早く帰るって言っていましたよ?きっとスティング君なら大丈夫です!」
「フローもそーもう」
(…あらあら、やっぱりこの子達はスティングとローグの事が大好きなんだなぁ)
2匹のキラキラした顔を見てわたしを笑みを浮かべる。
「…うん、そーだよね。2人ならすぐに帰ってきてくれるよね。 でさ?2人が行ってるのってどんな依頼なの?」
ふと疑問に思って聞いてみると、フローはぽかーんとした顔をする。
レクターはふるふると体を震わせ口を開く。
「お2人は…とある街の暴れている魔導師退治に行ったのです」
「と、とある街の…暴れ魔導師…?その街ってどこなの?」
「マグノリアらしいですよ。街が頻繁に破壊されるらしくて…」
ゆうはマグノリアという単語を聞いてから少し思い当たる節があり頭の中で整理をする。
マグノリア…マグノリアといえば妖精の尻尾のギルドがあったはず…なのにどうしてウチのギルドに依頼が来るわけ…?
その街にあるギルドに依頼すればいいのにどうしてなんだろう…?
「……ローグ…」
レクターの話に急に不安になったのかフローが目を潤ませる。
「あわわ不安にさせてしまいましたよね!すいません!大丈夫ですよ!スティング君もローグ君も強いんですから!」
目を潤ませながらレクターの言葉に頷くフロー。
「フローも、そーもう」
その光景に心がぐっとなり2匹の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「…きっと帰ってきた2人から面白いお土産話が聞けると思うよ」
頭の上にはてなマークを浮かべる2人にふふっと笑いかけるゆう。
すると、
バンッッ
と勢いよくギルドの扉が開く音がしてわたしたちは音がした方を見る。
するとそこには少し怪我をしつつぶすっとした顔をしているスティングとローグの姿があった。
「ローグ…!」
フローがとてとてと走りローグの右足にぎゅっと抱きつく。
「遅くなってすまなかったなフロッシュ。寂しかったか?」
「フローいい子にして待ってた、おかえりローグ…」
ローグとフローの空間だけ周りからは別空間に見えるほどにキラキラTHE涙の再開☆になっている。
その光景を横目にスティングはわたしとレクターのいるところまでやってくる。
「スティングく〜ん!今日もお疲れ様です!」
ちょっと大袈裟じゃない!?ってくらい帰ってきたスティングに手を振りながら笑顔で声をかけている。
まさにその光景が 推しアイドルに〔手を振って〕なんて文字が書いてある団扇を必死に降っているオタクのようでそれが面白くてくすっと笑う。
「ごめんなゆう。ローグにどうしてもって言われてさ。」
「やっぱりローグには勝てないな〜早くスティングの中で1番になれたらな、なんてっ」
てへっなんて舌を出しながら可愛子ぶって言葉を返す。
「てか!聞いてくれよ!仕事でマグノリアに行ってきたんだけどそこでさぁ!」
「ナツやグレイに会えたのかな?それとももしかして依頼の暴れ魔導師ってもしかしてナツたち?」
「えっ、はっ!?何で知って!??!!」
スティングの話の途中にゆうはさっき考えていた事を言ったら見事に当たっていたらしくスティングはこれでもかってくらい目を丸くさせる。
「ふふ、わたしだってローグに負けないくらいあんたの事想ってるんだからね?帰ってきた時のあんたの表情ですぐ分かっちゃったんだからっ」
鼻を高くして得意げに答える。
スティングからしたらきっとわたしは2番目の女だろうけど、わたしの中ではずっと1番はスティングなんだからね。
鈍感なのは分かるけど、早くわたしを女の子として見ろってーの!
「…で?それでわたしとの依頼は一体いつになったら行ってくれるのかな?またローグの後とか言わないよね?」
じーーっとスティングを見ながら言うとスティングも頭をぽりぽり掻きながら、
「あー、そうだな。約束は約束だしちゃんと行ってやるよ。…けどその前に、」
「ん??その前に〜??」
こっこれはもしかしてドタキャンのお詫びとかしてくれちゃったりーー!?
勝手な妄想に胸をときめかす。
「…ローグと風呂入ってくる」
そう言ってローグ(とフロー)を引っ張ってギルドから出て行った。
その後を「待ってくださいよ〜!」と慌てて追いかけるレクター。
その場に残ったのは1人置いてけぼりのゆう。
「………って、やっぱり2番目の女じゃねえか!!」
そんな大声をあげるわたしの気持ちに彼はいつ、気付いてくれるのだろうか。