プール / 双竜

「きゃははっ、やっぱり夏といえばプールだよね!」
「だろ!ギルドの中に作って正解だったな」

きゃっきゃっとわたしたちは今絶賛プールで遊び中だ。
わたしたちと言ってもわたしの他にスティングとローグしかいないけど。
しかもローグは全然プールに入ってこないし。

「ローグも泳ごうよ〜せっかく水着に着替えたのに勿体無くない!?」
「別に勿体無くはないだろ。俺はいいから2人で遊んでいろ」
「もう!!ローグのばかぁぁ!」

バシャァァッ

プールサイドで本を読んでいるローグにゆうは思いっきり水をかける。

「何をするお前は馬鹿か!」
「ぷぷぷ、ローグもあっさり水浸しだな」

びしょ濡れになったローグを笑うスティング。
ローグは読んでいた本を濡らされて怒っている。

「構ってくれないローグが悪いんじゃん!!」
「スティングがいるだろう、別に俺じゃなくても」

やれやれ、とローグは髪をかきあげながら呆れた顔をこちらに向ける。

「だってさっきからスティングってばビーチボールで遊ぼうとしても本気で返そうとするからビーチボール割っちゃうしわたしのこと抱えて飛び込むから鼻から水入ってきて痛いし顔面強打するし乱暴なんだもん!」

「だってプールで遊ぶっつったらそういうもんじゃねぇ!?」
「遊び方間違いすぎ!!わたし溺れちゃうから!!」

ゆうはスティングの頭にチョップを食らわせてやる。
痛ってぇ…と頭をおさえながら悪かったなと口を尖らせながら言うスティング。

ローグは2人の様子をまた始まったかと言わんばかりの顔で見ている。

「プールでの遊び方レッスンをこのわたしがしてあげ、きゃっっ!!」
「ゆう!!!」
「おい!!」

プールサイドのギリギリを歩いていたせいで足を滑らせてプールへ落ちてしまいそうになるゆう。
その瞬間、ローグとスティングはゆうへと手を思い切り伸ばした。

ぱしっっ

しゅるる

…?ん??しゅるるって……?

腕には掴まれている感触がある。
固く閉じていた目をゆっくりを開く。

2人のうちどちらかが腕を引いてくれたおかげで幸いにもプールへ落ちることはなかった。

がしかし、2人の方は目を向けてお礼を言おうとしたその時、何故か顔を真っ赤にしている2人の姿があった。

それにスティングの手にはわたしが着ていた水着が。

………水着が…?

もしかして、と思いゆうは恐る恐る目線を自分の身体へと向けると…

「いっっっ、いやぁぁぁああああああああ!!!」

「誤解だ!!!誤解なんだって!!!!!!」
「スティング…お前という奴は…」
「ローグまで何言って…!!だから本当に違うんだって!!これは事故だ!!!」


わたしの腕を引いてくれていたのはローグで、スティングはわたしの腕を掴もうとしたら水着の紐を引いてしまったらしく勢いで水着のみを引っ張って取ってしまったらしい。

そう、状況としては上半身すっぽんぽんである。

「ふえぇぇ、もうお嫁にいけない……」

ぐすん、と胸を隠しながら身体を小さくさせるゆうに2人は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「そんなの、俺が責任取ってやるよ。俺のとこにこい」
「何を言っている、お前のところになんか不安でやれるか。ゆうの面倒は俺がみよう」

バチバチと火花を散らしている2人。
けど2人の発言にゆうは恥ずかしさがこみ上げてくる。
絶対そんなこと言わなさそうな2人がわたしにプ、プロポーズ…!?

嬉しいような気もするけど2人から1人を選ぶなんてわたしにはできないよ…っ。

「2人の気持ちはすごく嬉しい。でもわたしはどっちかを選ぶなんてできない…」

「そうか…」
「そう…だよな…」

その場の空気は暗く重たい空気へと変わる。


「だから………わたし2人と結婚する」

重い空気の中ゆうの一言がその場の空気をまた更にガラッと変えた。

「なっ!?」
「はぁあ!!?」

驚きを隠せず声を上げる2人。
その2人の腕に絡みつき3人で身を寄せる形となった3人。
当然スティングとローグは頬を赤らめている。
ゆうはいつものような人懐っこい笑顔を2人に向けて、

「これから先ずっと、3人でいられたらな〜なんてさ!」

そう言うとスティングもローグもふっと笑う。

「「あぁ、そうだな」」