温泉旅行 / 妖精の尻尾

「みんなとこうやってお出かけするのひっさしぶり〜!」
「そうね〜ここのところずっとバラバラで仕事してたし?」
「私ルーちゃんたちとのお出かけ初めてだからすっごい楽しみ!」

ここはとある街の温泉街。
硫黄の匂いが鼻を掠める。

「うぅ…グレイ様とも来たかった…」
「なーに言ってんのよ、今日は女の子だけの旅行なんだからね。男子禁制よ」

しくしくとグレイを恋しがるジュビアの背中をせっせと押すルーシィ。

その光景をくすっと笑いながら見ているゆうとレビィ。

今日はこの4人で有意義な休日を過ごしている。
この温泉街の旅行券をいつもお世話になってるからとロキがくれたのだ。

「ねぇルーシィ、本当はこの旅行ロキと行こうとしてたんじゃなーい?」
「そうなのルーちゃんっ!私たち来ちゃってまずかったかな…?」
「どぅえきてるぅ〜〜??」

ゆうとレビィの後ろからひょこっと現れるハッピー。

「ちょっとあんた!どうしてここにいるのよ!それにロキとは何もないから!」
「ということはグレイ様も…!?」
「ううん、グレイはいないよ。オイラだけみんなの後ろを付けて来たんだ」

ジュビアはまたしくしくと泣き始めそれとレビィとゆうが慰める。

「あんたこのメンバーを見て何かわからないわけ?」
「え?何かしらのマニアの集まりでしょ?」

「いやいやいやいや!一体何のマニアだって??言ってみなハッピーさんよぉ」
「えーっと、ルーシィはコスプレマニアでレビィは本マニアでジュビアはグレイマニアでゆうは食べ物マニアでしょ〜」

何の悪びれた様子もなく淡々と話すハッピーに4人はそれぞれの反応を見せる。

「はぁぁ!?誰がコスプレマニアですってぇ!?」
「食べ物マニアってなに!デブって言いたいわけ!?」

と怒る2人と、

「まぁ本は好きだしね〜」
「グ、グググ…グレイ様マニア…!」

ははは〜と笑うレビィと顔を真っ赤にしているジュビア。

「なんかさ〜ルーシィとゆうってそっくりだよね〜おバカなところとか」

ぷくくと小馬鹿にして笑われる。

拳を握りハッピーに殴りかかるんじゃないかって勢いのルーシィとゆうをレビィとジュビアが止める。

「落ち着いて2人とも〜!ほら早く旅館に行って温泉に入ろう〜!」

怒り狂う2人を何とか宥め、目的の旅館へと足を進める。
そしてその4人に並んで飛ぶ1匹のネコ。



「は〜いいらっしゃいませぇ〜ようこそお越しくださいましたぁ〜っ」
「お世話になりまぁ〜す!」

女将さんから部屋を案内してもらい荷物を下ろす。

「んん〜っ、さいっこうね〜!しかもここからの景色も綺麗だし!」
「ここのテラスでゆっくり本が読めそう〜」
「グレイ様とも来たかった…次こそはグレイ様と…」

「ねぇハッピー、ナツは放っておいて大丈夫なの?」
「あいっ、オイラがいなくてもナツなら大丈夫だよ」

きっとナツは今頃ギルドでぐーたらしてるかグレイと喧嘩でもしてるんだろうなぁ、なんて思いながら「そうだね」と返した。

「じゃあとりあえず、お風呂でも行かない?」
「行く〜〜!」
「あいさー!」
「いやいや、あんたはオスでしょうが。女湯には入れないのよ」

やれやれと呆れるルーシィにハッピーはぷぅと頬を膨らませる。

「ジュビア、グレイ様とお風呂に…」

とジュビアは1人で妄想を始め悶絶し始めた。
その光景を「始まってしまった…」と3人はジュビアとハッピーを部屋に残して温泉を入りに浴場へ向かう。

「わたし温泉なんて久々だな〜」
「あたしも広いお風呂は久しぶりー!」
「私はこの間の仕事で温泉に来たけど入ったの1人だったからゆっくりできなくて残念だったから今日はゆっくりできそう〜」

脱衣所はまだ早い時間のせいか人はおらず、温泉は貸切状態だということがわかった。

3人はシャワーを浴びてみんなで身体を洗いっこする。

「きゃははっ、ちょっとゆうくすぐったいじゃないのよ〜」
「ふつうに洗ってるだけなのに〜ルーシィってば感度がいいんじゃない?」

にやにやと笑いながらルーシィの顔を伺う。
ルーシィは「ばかっ何言ってんのよ」と慌てて否定をする。
2人のやりとりに大笑いをするレビィ。

バジャーっとお湯をかけて泡を落とす。
そしてゆっくりと温泉に浸かった3人は手足を思いっきり伸ばして温泉を堪能している。

顔を真っ赤にしてのぼせるまで浸かっていた3人はへろへろと脱衣所まで出る。

「さすがにちょっとのぼせたわね〜」
「私も〜全身真っ赤だ〜」
「むり〜早く水分補給しなきゃ〜」

浴衣に着替え、火照った身体を団扇でぱたぱたと扇ぎながら部屋へと向かう。

ゆうは途中の自販機で瓶のコーヒー牛乳を買いそれを一気飲みする。

「っっぷはぁぁっ!やっぱりお風呂上がりはこれ!」
「ゆういい飲みっぷりだね〜私はお水にしよっと」

レビィは買った水を一口飲んだら はいルーちゃん、とボトルをルーシィへと渡す。

「レビィちゃんありがとう。…っんん、生き返る〜」

あははは、なんて笑いながら廊下を歩き部屋に着く。

しかし部屋の中では、ドンッバンッドタンッ と騒音が聞こえる。
部屋を間違えたのかと部屋の番号を確認するが自分たちの部屋だった。

恐る恐る襖を開ける、とそこには…
物凄い喧騒で枕投げをしているエルザ、ナツ、グレイの姿があり奥の方ではジュビアとハッピーが倒れている。


それを見た3人はそっと襖を閉め、ロビーへと足を進め現実逃避をすることになるとは誰が予想していただろうか。
3人はただただ帰ってからのマスターのお仕置きに肩を震わせるのであった。