キーンコーンカーンコーン
放課後を知らせるチャイムと共に生徒はみんな一斉に教室から去っていく。
部活がある者は各場所へ、帰る者は下駄箱へ。
何も用はないが教室に残り談笑をする者もいる。
わたしは速攻で帰る。奴らに捕まらないよう光の速さで。
誰よりも早く下駄箱に着き履き物を替えると秒で校門まで走る。
「もう少し…!今日こそは家でゆっくりするんだから…!」
あと少し、なまえが生徒玄関を出てからぞろぞろと他の生徒も出てくる。
そしてその中になまえを目掛けて走ってくる2人の姿。
「勝った……!!」
「…と、思うじゃん?」
「わっっ!」
全力ダッシュをしていたなまえの体はふわっと宙に浮き、担がれた。
「おー、さすが槍バカ。よし、なまえを捕獲したし本部に行くか」
「やーーーだーーーー!!離してよねやん!!」
「だーめ、今日も俺の練習に付き合ってもらわねぇとなんだから」
「いやいや今日は俺だから、お前昨日何戦したよ。俺なんて2戦しかできてないんですけど」
「いやいやそれは1戦1戦時間かかりすぎなだけじゃん?俺みたいにさくっと終わらせれば何戦でもできるじゃねーか」
「そんなことしたらなまえが可哀想だろ?致命傷にならない程度の傷で攻めて最後はトリオン切れで俺の勝ち。それならなまえの精神的ダメージは少な、」
「いや変わらないから、結局負ければ精神的ダメージはでかいから」
なまえを他所にやや口喧嘩気味の2人の話を担がれたまま聞いていたなまえはムッとして口を開く。
2人は「まぁそりゃそうか」なんて口を開けて笑い出すがわたしは非常にむかついている。
へーへーそうですよ、どーーーせ個人ランクA級下位のわたしは上位の2人に勝てるはずないんですもんねーー!!
一応これでもA級にはなれたんだけどなー!!
「ははっ、ごめんって。まぁなまえに射手の特訓つけてるの俺だし、だいたい手の内は分かっちゃうわけ。あと強いて言えばメテオラで決めようとしてるのバレバレであれじゃ当たらねーよ」
「それになまえってば敵を撹乱するの下手すぎ。後ろに目線送って騙そうとしてるつもりだろうけどありゃダメだな。詰めが甘い」
やれやれと小馬鹿にしたような言い方になまえは頬を膨らませて更にムッとする。
「も〜〜これでも必死に万能手としてランクをちまちま上げてきてるのに〜〜〜」
「まぁ確かに、先週スコーピオン使い始めた割にはそこそこ形になってきてるしセンスはある。けどやっぱ隙がありすぎんだよな〜」
「出水は弾数でどうにかしてるだけじゃん。てかよねやん下ろして恥ずかしい」
「ぶはっ確かにそれはあるな。弾バカらしい戦い方じゃん。逃げねーなら下ろしてやってもいいけど?」
「どうせ逃げても捕まえるじゃん」とじと目で見て諦めたように手をヒラヒラさせる。
それを見た米屋は担いでいたなまえを下そうとするがそれを出水が止める。
「ちょい待ち、今いい角度なんだわ」
担がれて無抵抗のままヒラヒラと風でスカートがなびく度にパンツがチラチラと見える事に気づいてた出水は米屋となまえの少し前を後ろ歩きで歩いて気付かれないようなまえのパンツをこっそりと見ていた。
が、この発言にさすがに察した2人。
米屋は食いついて出水に写メを撮るよう促す。
なまえは恥ずかしさで顔を真っ赤にして慌ててスカートを押さえる。
「ぎゃぁぁああ!!友達に盛んなど変態共!!太刀川さんも迅さんも変態だしA級はみんなそうなの!?」
「あの2人と一緒にしないでもらっていい?とくにウチの隊長とは」
「いーやお前も太刀川さんと同じだろ?最近似てきてんぞ」
「はぁ!?」
「ちょ、まじ下ろして!?言い争ってる場合じゃないから!」
なまえは言い争ってる2人を他所に必死にスカートを押さえもぞもぞと動く。
てか女子をこんな簡単に担げる男子いる?
さてはこいつトリオン体だろ今。
通りでもがいてもびくともしないわけだ、こんなことのためにトリオン体になるとかアリなの!?
はぁ、とため息をつくなまえ。
しかしふと先ほどの会話で気になる点が生まれた。
「…ん?ということはもしかして嵐山さんも表は優しいお兄さんだけど実はむっつりスケベ、とか…!?」
そんななまえのぽつりと呟いた一言に2人は言い争いをやめ、少し考える。
「あー、確かに嵐山さんむっつりっぽいわ。奥手な感じある」
「いやいやあれは絶対女の扱い慣れてるって。経験豊富そう」
「ちょっと2人共!わたしの嵐山さんを汚さないで!!ずっと優しくて頼りになるお兄さんのままでいて……そして将来はわたしと結婚してくれ…」
「「はぁ!?」」
急に大声を出す2人にビクッと肩を動かすなまえ。
両耳を手で押さえて顔を顰める。
そして米屋が急に下ろしてくれたと思えば2人にいきなり肩を掴まれ揺さぶられる。
「お、お前嵐山さんが好きだったのか!?聞いてねぇよ!」
「俺ら何も聞いてねーんだけど!てかまずお前じゃ無理だろ」
2人同時に話すもんだからなまえの耳には全く入ってこない。
けどよねやんが言った最後の"無理だろ"は聞き取った。
「いやいやいやいや無理じゃないから!?まぁ好きというか憧れ?みたいな?それにいつも優しくしてくれるしきっと嵐山さんもわたしの事が好きなはず」
「ははは、ノーコメント」
「おめでたい頭してんなお前」
なまえの発言から一気に2人はなまえのことを可哀想な目で見るようになり揺さぶられていた肩はポンポン、と叩かれた。
「…あー、今日は心がしんどくなったからもうおうち帰ろうかなぁ」
「ごめんて、お前には俺らがいんじゃん?」
「そーそー、寂しくさせねぇから行こうぜ」
出水が右腕、米屋が左腕を組んできて3人仲良く腕を組んで本部へと向かう。
まぁそうだね。
今はこのまま、この3人で過ごせる毎日を目一杯楽しまないと。
いつこの当たり前の生活がなくなるかわからない日常なんだもんね。
2人を交互に見れば2人がニッと笑いかけてくれるのに釣られなまえも笑顔を向ける。
そしてこの後本部に着くなり個人ランク戦を始め、なまえがこの2人に惨敗するのは言うまでもない。
当然のようになまえからポイントを掻っ攫っていく。
「もう2人のテス勉付き合うのやめます。来月の期末はどうぞ自分たちで対策してください」
「あああ悪かったそれだけはご勘弁!!」
「夕飯奢るから俺たちを見捨てないでくれぇぇ」
負けるのは悔しいし嫌だけど、今はこの何事もないただ普通の日常を過ごせている毎日を大切にしよう。
そう、わたしにはみんなが居てくれるから頑張れる。
1人じゃない。
「じゃあ今度からポイント移行なしにして」
そしてまた3人の練習が始まるのだった。