/ 二宮隊

B級ランク戦

わたしの隊は二宮隊、生駒隊と当たり2ptは取れたものの敗北した。

B級上位にはギリギリ残ってられるくらいの戦力。

チームはランク戦後解散して部屋を出る。
負けた後のミーティング程鬱になるものはないので当日にはしないのがわたしたちの隊の決まり事。
なので各々ランク戦後は自由行動となる。

ゆうは真っ直ぐ家に帰ろうと帰路についていた。
本部を出ようとしていたところで声をかけられる。

「あっ、ゆうちゃ〜ん!さっきはおつかれ〜。やっぱ俺ら強かったっしょ?」

犬飼はゆうを見つけると駆け寄ってきて2人で立ち話を始める。

「うわぁ強者の余裕??腹立つ〜!ニノさんに見つかったら最後なの分かってはいてもやっぱり逃れられないの無理しんどい」
「あはは、うちの隊長に挑んだのはびっくりしたよ。瞬殺だったけど」

犬飼はゆうを小馬鹿にしてケラケラと笑う。

「あれはああするしかなかったというかワンチャンあそこでニノさん倒したらこの試合勝てる!って思ったから…!」
「まぁそのギャンブラー精神、ゆうちゃんらしいっちゃらしいか〜。逃げてもどうせすぐ捕まるもんね」

話してる犬飼の後ろの方から辻と二宮が向かってきているのが見えた。

ゆうはやや気まずそうにそそくさとその場を去ろうとする。
が、それを察した犬飼がゆうの腕を掴んで阻止。

「わっ犬飼!離して!わたしは用事を思い出した!」
「どうせ二宮さんが来たからさっきの試合のダメ出しされるって逃げようとしたんでしょ?そうはさせないよっ」

不敵な笑みを浮かべ逃してはくれない犬飼。
ゆうはこの後の展開を頭に浮かべ肩を落とす。

絶対に長い時間ダメ出しで拘束される、以前もそうだった。これは少なくても2時間はかかるやつ。

「おーい!二宮さん、辻ちゃん!こっちこっち〜!言われた通りちゃーんと捕まえときました」
「んん!?捕まえ!?え!?」
「犬飼よくやった。ランク戦後はすぐに本部を出ると思っていたがまさかこんなあっさり見つかるとはな」

二宮の後ろに隠れるように歩き、なるべくゆうと目を合わせないようにする辻。

それもまぁ異性が苦手な辻には不思議ではない行動だが、試合中の様子と全く違う。
試合中は容赦なく斬りかかってくるくせに普段会うといつもこんな感じにみんなの後ろに隠れる。
そして自分から声を掛けてくることはそうそうない。

「辻ちゃん?そろそろわたしに慣れてくれてもいいんだよ?別に襲うわけでもないんだし」

そう言った後、その場にいた全員がゆうを見た。
顔は「ありえる」とでも言いたげな表情をしており、犬飼はクスクス笑う。

「あっ、いや…すいません、そんなつもりはなくて…こ、これでも少しは自分からはっ話せるようになってきていて…」

喉から声を絞り出しているのがよくわかる。
あー、可愛い、このウブな感じがいい。

「立ち話もなんだ、どこか店に入って話すとしよう」
「いつものところは先程席の予約をしておきました」
「あのぉ今日はニノさんの奢りですかぁ?」
「"今日は"?お前が自分で払った事、一度でもあったか?」

二宮がギロッとゆうを見ればゆうはてへへなんて誤魔化す。
4人は辻が予約を取った店まで話しながら歩く。
先頭を歩くのは犬飼とゆう、その後ろを歩くのは次の任務の話をしている二宮と辻。


「久々だね〜このメンツでの飯!俺らは任務の後たまに行くけど、ゆうちゃんなかなか捕まんないんだもんな〜」
「いや待て君が連絡してくるの何時だと思ってんの?夜9時以降や早朝だよ?てか早朝ってなによお店閉まってんじゃん」
「あははごめんごめん、ゆうちゃんなら来てくれるかなって。朝連絡してんのは任務終わりゆうちゃん家に行って疲れを癒してほしいからかなっ」

ヘラヘラと犬飼が笑い、ゆうはジト目で犬飼を見る。見るというより睨む。

「着いたな、入るぞ」
「はい」
「はーい」

それぞれ順番に店内に入り予約しておいた席へと座る。
座敷の個室の席でお高そうなお店に辺りをキョロキョロ見回すゆうを見て二宮がやや呆れた。

「そんなにキョロキョロするな。落ち着きがない奴だな相変わらず」
「あっす、すいません。こういうお高そうなお店って入らないので緊張しちゃって」
「ゆっ、ゆうさんは普段の食事どうされているんですか?」
「お、辻ちゃんやっと普通に会話できるようになってきたんじゃない?ご飯はほとんど自炊で外食ってそんなにないかな、今日みたいに強引に連れてこられる以外は」

コースを予約していたのかお料理とドリンクが運ばれてきた。
目の前に置かれたドリンクを手に持つよう促されそのまま持てば犬飼の乾杯という声でグラスを鳴らす。

最初の一杯目は料理を邪魔しないようになのかノンアルコールのシャンパン。

「あれ、そういやひゃみちゃんは一緒じゃないんですね?」
「ひゃみちゃんは用があるって本部に残ってるみたい、ランク戦の後まで作業ってすごいよねー」

「…そろそろ本題に入るぞ。今日のランク戦の反省点を各々自己分析していると思うがまずは瀬川、お前は今日のランク戦どうだった」

「わっ、わーすごい急に話振るじゃないですかニノさん。わたし的には特に反省点はないですね、むしろ水上くん倒せたしイコさんの片腕取れたから上出来かなと」

最後はキメ顔で二宮を見るゆう。
それを見た二宮は頭を手をやりため息をこぼす。

「全く反省していないようだな」
「反省どころか遠距離タイプ射手の水上くんを接近タイプ攻撃手のわたしが倒したんですよ!?むしろ褒めてほしいくらいです」
「何言ってのゆうちゃん?あれは俺のおかげでしょ?いいとこ取りされて俺悲しかったなー」
「はっはー!この世は弱肉強食よ!!」
「うわー、そんなだからうちの隊長に蜂の巣にされるんだよ」

ケラケラと笑う犬飼にムッと頬を膨らませたゆうが睨む。
その犬飼の横でどう宥めたらいいのかわたわたする辻。
ゆうの隣に座る二宮は呆れたと言わんばかりに無視をし目の前の料理を口へと運ばせる。

「とっ、とりあえず!料理っ食べませんかっ」

辻は取り分けてくれたサラダをゆうへと渡す。

「あっ辻ちゃんありがとう。辻ちゃんは優しいな〜どこかの鉄仮面隊長に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ」
「…ゆうちゃん、ご愁傷様」
「え?」

犬飼は気まずそうに目線だけ二宮を見ると、ゆうも釣られて二宮を見る。

「…瀬川、店を出たら俺たちの作戦室でその甘ったれた根性を叩き直してやる。今日は寝れないと思えよ」

ピリピリとした空気、目の前の2人はバツが悪そうに目を逸らし黙々とご飯を食べ続ける。

「あっ今日は予定が、」
「お前に拒否権はない」

そんなああああああ!とそこそこ大きな声が店内に響き、辻と犬飼は心の中で手を合わせた。

「待ってもしかして二宮さんとふたりっきり!?犬飼は!?辻ちゃんは!?」
「この2人は関係ないだろ。問題はお前にだけあるんだからな」
「でも!でもでもでも!攻撃手のことは攻撃手が1番良くわかると思うんです!だからせめて辻ちゃんは…!」

ピクっと肩を揺らす辻、目の前の2人に急に見られることになり少し何かを考えた後そっと、

「俺は別に、訓練に参加しても大丈夫です」

そう呟いた。

天使、かっこいい、好き
これは全女がキュン死する。