気持ち / 影浦雅人

諏訪隊の瑠衣ちゃんととあるお店前で待ち合わせをしているゆう。
久々の女の子とのご飯で張り切りすぎて待ち合わせの20分前に着いてしまいやや寒くなってきた秋空の下で待ちぼうけ。

「部屋の中あったかいからついつい着る服間違えちゃう癖どうにかしないとな〜いっそのことトリオン体になろうか」

手に持っているトリガーをカチャカチャといじる。

「あれれ?ゆうちゃん?もしかしてゆうちゃんもカゲに呼ばれてるの?」

声をかけられ横を見るとそこには北添とユズルの姿が。

「ゆうさん何でそんなに薄着なの。季節外れじゃない?」
「いやほんとそれは外に出てから思った、カーディガン羽織ってるとはいえもう肩は出しちゃいけないね。そしてちなみにカゲには呼ばれてないし呼ばれててもカゲとは会わん」

ジト目で北添にそう言うとわりと大きめのくしゃみをするゆう。

「っっぶえっっくしょん!!」

きっとこれがアニメなら完全にわたしの鼻からは綺麗に鼻水が伸びていたであろうくしゃみ。
北添がそっとティッシュを渡してくれ鼻をかむ。

「何でずっと外に?入ればいいのに」
「んー瑠衣ちゃんと待ち合わせしてて中で待つとわからないかな〜って思って、あっ瑠衣ちゃんからメールきた」

ユズルと話してる時に携帯のバイブが鳴りゆうはカバンから取り出して画面を見る。

" ごめんゆう!任務が長引いて帰れなくなったからご飯また今度にして!本当にごめん〜! "

瑠衣ちゃんからのメールはこれ。
忙しい中誘ったわたしも悪いけど久々の予定だったから残念だ〜〜。

おっきなため息とポロポロ出る涙でメールの内容を悟った2人がゆうの肩をそっと叩く。

「まぁまぁ、予定なくなっちゃったなら俺たちとお好み焼きでも食べようよ」
「今日カゲさんの奢りって聞いた」

慰めてくれる2人が眩しい、なんて優しい2人なんだ…。
なのにこのチームのリーダーときたら…、

「ったく店の前でギャーギャーうるっせぇな来たならさっさと入れよ」

頭を掻きながら柄の悪そうな男が店から出てきた。
そしてわたしたち3人を睨むと店に入るよう促す。

「…あっわたしはその…これで!」
「お前も入んだよさっさと来い」

じゃ!と手を挙げそそくさと逃げようとするも腕を掴まれそのまま店の中へと連れて行かれるゆう。
席は連れて行かれそのまま座るが隣に座っている男の視線が刺さって痛い。

目の前の鉄板では手際良く北添がお好み焼きを焼いてくれており美味しそうな匂いが漂う。
お好み焼きを見つめながらずっと黙っているゆうに隣の男、もとい影浦が口を開く。

「お前いい加減俺の隊に入りやがれ、何度言わせんだよ」
「何度言われてもカゲの隊に入らない!てかどこの隊にも入らないって前から言ってるよね!?」
「いや入れ」
「嫌」
「入れ」
「いーーや」

そのどうでもいい口喧嘩を北添とユズルがまた始まったかぁと見る。
北添は大喧嘩にならないかやや不安気味、ユズルは頬杖をついてため息。
2人がこの光景を目にするのはもう何度もだろうか。
影浦とゆうは顔を合わせる度にどんな場所だろうとこんな感じで言い争う。

「俺とお前の相性は最高だろ?」
「ぶぇふっっ!」

影浦の言葉にユズルが盛大に飲んでいた水を吹き出した。

「わわっユズル大丈夫!?カゲが急に変なこと言うからだよ〜」
近くにあったおしぼりでテーブルやユズルの服を拭いてあげる北添。
ユズルも顔の水を拭く。

ゆうは顔を赤くして反論する。

「相性って急に何を言い出すの!?」
「あぁ?相性は相性だろ馬鹿か?」
「馬鹿なのはあんたでしょ!わたしたち付き合ってるわけじゃないしましてや身体の関係とか……」

徐々に声が小さくなり最後の方は消えかけて鉄板のジュージュー音にかき消される。

「何何2人とも!ゾエさんの知らないところでそんなことになっていたなんて。ゾエさん嬉しいな〜」
「ちっっちがうからっ!」

北添とゆうの会話に何故か張本人である影浦はキョトンとした顔をしお好み焼きを食べ始める。

「いつから?何も聞かされてないんだけど」
「そうだよゾエさんに報告してくれないとか寂しい」

「報告も何もほんと何もないんだって!……あっっふっ!!」

やけ食い、とまではいかないがあまりに恥ずかしくてつい熱々のお好み焼きを口いっぱいに入れてしまうゆう。

「おい馬鹿!何してんだてめーは。ほら水飲め」

影浦は近くにあった自分のグラスをゆうに渡し水をほぼ強引に口に入れてくる。
入りきらなかった水が口の横を通り喉を流れる。

心配そうに見る北添とユズル、何かを察したのかそっとお金を置いてテーブルから離れていった。

もちろん2人はそんなことには気付かず。

「……はぁ、はぁ…あんたばかぁ!?殺す気!?」
「てめーが火傷すると思って水飲ませてやったんだろうが、感謝しやがれ」
「いやいやいやめちゃくちゃ水溢れて服びしょ濡れなんですが!?」
「…ったく、来い」

ゆうの腕を引っ張り店の奥を抜け自身の部屋へ連れて行く影浦。

「まっ、待ってどこ行くの!?」
「あ?部屋だよ。てめーが服濡らしたっつってっから」

へ、部屋!?…HEYA!!?
いやいやいやいや待て、さっきの話の流れからカゲの部屋に行くのはまずくない!?やばくない!?

頭の中で色々考えてる間に影浦の部屋に着き気が付けば部屋の中でクローゼットを漁る影浦の後ろ姿を眺めているゆう。

「ほら着ろよ、てめーにはちょっとでけぇかもだけどその季節感のねぇ服よりマシだろ」

ゆうの顔にバフっとパーカーが投げられる。
フワッと香る影浦の匂いに少しドキッとしてしまうゆう。

…って何ドキドキしてんのわたし、相手はカゲ。今までカゲと居てドキドキしたことなんてなかったじゃん。

深呼吸をして精神を整えパーカーを手に取る。
そして着替えろと言う割に部屋から一向に出て行こうとしない影浦。

「…あのぉ、カゲさん?着替えたいので出て行ってもらっても?」
「あぁ?ここは俺の部屋だぞ何で俺が出ていかねぇといけねぇんだコラ」

いやおい!それじゃあ脱げねぇだろうが!あほか!?あほなのか!?

「さっさと着替えろよ。脱がねえなれ俺が脱がせてやる」

羽織っていたカーディガンを脱がされオフショルのトップス姿になり恥ずかしさで頬を赤くするゆう。
影浦はゆうの顔に自身の顔を近づける。

ゆうは反射的に目を瞑る。

(あっやばいこれキスされ…)

ペロッ

「ひゃっっ」

キスされると思い目を固く瞑っていたゆうは目をかっぴらいた。
それもそのはず、キスをすると思った影浦の行動は全く外れゆうの口の横を舌で舐めた。

「口の横、ソース付いてたぜ」

影浦の行動とソースが付いていたという恥ずかしさにどうしていいかわからない感情になったゆうは自暴自棄になり影浦の両頬を手で押さえ、キスをした。

少しして離れ、ドヤ顔でしてやったと言わんばかりの表情を影浦に向ける。

さっきまでの自分のような驚きと恥ずかしさで顔を赤くすると思っていたが大外れ。
何故か不敵な笑みを浮かべているではないか。

「案外大胆なんだなお前、そういうとこも嫌いじゃねぇ」

あっこれはやばいやつだ、逃げよう。

そう思い部屋から逃げようとするも捕まった。

「おらさっさと脱げよ、着替え手伝ってやるからよぉ」

そう言ってトップスを強引に脱がされ上は下着姿になってしまったゆう。

「隊員にはこんなこと出来ねぇけど、俺の隊に入らねぇっつうなら関係ねぇよなぁ?」

影浦はゆうをベッドに押し倒して上に跨る。
ゆうはこれからされるであろうことを察して緊張と恥ずかしさで固まる。

「わっわたしたち付き合ってない!カップルじゃない!カップルじゃないとこういうことダメなのですよ!」
「別にそんなん関係ねぇだろ。好きな女をどうしようが俺の勝手だ」

……ん…?
あれ…、今好きって……?
好きな女って言わなかった…?

もしかして、好きな女を側に置きたくて隊に入れって言ってたの?
待って何それ、

「可愛すぎない?」

心の声が漏れてしまうゆう。
ハッとして手で口を押さえるも影浦は挑発されたと勘違いをする。

「随分余裕そうじゃねえか。その余裕もいつまで持つか見ものだな」

「待っ、」

影浦のがっついたキスに言葉は遮られ意識は全て持っていかれた。
息継ぎすら忘れ苦しくなり影浦の胸を叩き唇を離す。

「っはぁ…はぁ……っ、もっと優しくしてよ」
「その様子じゃ何の経験もなさそうだな」
「は、はぁぁぁぁ!?べっ別に未経験って訳じゃないんだから!キスくらい経験あるし!」
「……あ?」

ゆうの言葉に顔をしかめあからさまに不機嫌になる影浦。
目つきが鋭くなりゆうの肩をベッドに強く押さえ込み手に力を入れる。

「いっ!痛いカゲ…!」
「そのキスの相手って誰だ言ってみろ、ぶっ殺す」

真っ直ぐゆうを捉える影浦の視線。ゆうは急な影浦の変化に体を震わせる。

こんなカゲ、今まで見たことない…けどわたしが今カゲに怯えてることはきっとサイドエフェクトで分かってるはず。
分かってて腕を退けないって事はカゲも真剣に聞いてきてるって事、だよね。

「………太刀川さん」
「あ?」
「…だから、太刀川さんにされたの。前みんなでご飯行った時成人組がお酒飲んでて、酔っ払ってた太刀川さんにいきなり」
「クソ腹立つ、終わった事だから今更ごちゃごちゃ言っても意味ねぇけど胸くそわりぃ」

影浦はゆうを押さえていた腕の力を抜き肩を離すとそのままゆうを抱きしめた。

「…!?どっどうした…!?」
「何でもっと早くに素直に言っとかなかったんだろうな、お前を俺のモノにしとけばこんな感情にならなかった」

先程までの影浦とは真逆な姿に戸惑いつつ、ゆうはそっと影浦の背中に腕を回して抱き締め返した。

「…ねぇカゲ、わたしがどうしてカゲの隊に入らないか教えてあげるね。わたしがカゲの隊に入ったらきっとみんなわたしたちに気を遣ってちょっとギクシャクしちゃう、今チームワークが凄くいい感じなのにそれを乱したくないのわたしは。…言ってる意味、わかるかな…?」
「わからねえよ」
「ばか、カップルがチームにいたら喧嘩した時とかいちゃついてるとき他のチームメンバーは気まずくなるでしょ」
「は…?お前、」
「別にチームじゃなくても側にいる方法なんてあるじゃん」

その言葉を聞き、ゆうを抱き締める影浦の力が強まる。
そしてゆうから見える影浦の耳がほんのり赤く染まっているのを目にしてゆうは思わず笑みを浮かべた。

ゆっくりとゆうから体を離し、真っ直ぐ目を見る影浦。

「今すぐ俺の女になれ」
「それは一体どういう意味で?彼女?お嫁さん?」
「嫁だ、ぜってえ誰にも渡すかよ。ただでさえお前が進学校なんかに通ってんのが気に入らねえのにアイツと同じクラス?ふざけんじゃねぇよ」
「まぁわたしも自分で進路決めないで人に言われたまま進めたのも悪いけどさぁ…当時は風間さんが勉強教えてくれてたおかげで推薦もらえたし…。けど進学校とは言え成績は下の方だから。それに犬飼と同じクラスなのはたまたまだか、」
「たまたま?はぁ?3年間一緒じゃねぇかよ。アイツが裏で何か操作してんだろどうせよぉ」

告白?プロポーズ?かと思いきや急にぶつくさ文句を言い始める影浦にゆうは呆れた。
そんなこと今ここで言っててもしょうがないじゃん、わたしが何かしてるわけでもないんだし。

「そんな文句言うならカゲが進学校に来ればよかったじゃん」
「ふざけんじゃねえ、んなクソめんどくせぇ学校誰が通うかよ」
「はーん、とか言いながら実際は成績が足りなかったんでしょ?」

にやにやと影浦を見れば影浦は眉をピクッと動かし「言うようになったじゃねぇか」と不敵に笑うとゆうの太ももに触れた。

「ちょっ!どこ触ってんの変態!」

ゆうは影浦の手をビンタして太ももから離す。

「お前さぁ、この状況わかってんのか?」

状況なんて分かってる、今わたしがカゲの下にいて今にも襲われる寸前だってことも。
けどきっとカゲはしない、わたしが嫌がることは絶対にしてこないから。

キスより先はちゃんと付き合ってお互いが素直になれたらしたい、こんな口喧嘩しながらなんて嫌だもん。

「…ねぇカゲ、好きだよ」

ゆうは影浦を真っ直ぐ見つめてそう口にしたのちににっこりと微笑んだ。

それを聞いた影浦もにひっと笑い、

「あぁ、俺もお前の事がずっと好きだった」

そう言葉にして2人は強く抱き合った。
そのまま2人は安心感からか眠気がやってきて眠りにつき起きた時には外も部屋も真っ暗になっていた。

抱き合いながら眠りについた2人の夢は言わずもがな幸せに満ち溢れた夢だったのでした。