/ 嵐山准

ある寒い日の朝、鼻を真っ赤にしながら学校への道を歩く女の子の姿がひとつ。

「ふぇっくしゅっ!…うぅ寒い…学校行きたくないなぁ」

鼻をずびずびさせるゆう。季節は冬を目の前にし急激に寒くなった気温に体が悲鳴をあげていた。

「おーい!ゆうじゃないか!こんなところで会うなんて珍しいな!」

後ろから声を掛けられたゆうは振り返ると、先輩である嵐山が手を挙げてゆうのところに駆け寄ってきた。

「そうですね〜わたしは毎朝この時間ですけど嵐山さんは任務や講義の時間によって登校時間が変わりますもんね〜」
「まぁそうだな。それよりゆう、寒くないのか?鼻が真っ赤だぞ」

自身の鼻をトントンと指で触りゆうの鼻が赤くなっていることを示した。

「そりゃこの寒さですよ〜!女子高生には厳しい寒さです」
「ならまずそのスカートをもう少し長くしたらどうだ?」
「イマドキの女子高生はこの長さがベストなんですよ。コートからちらっと見えるこのバランスが最高なんです」

きっと嵐山には興味ないだろう女子高生のスカート事情を熱く語り、普段見せないその真剣な姿に思わずクスッと笑う嵐山。

「その熱をもっと任務でも見せてくれたらいいんだがな。やや無関心で何を考えてるかわからないところは相変わらず迅にそっくりだ」
「まぁ一応わたしの師匠ですからね〜どすけべなところは本当に困りますけど」
「修行なら俺も空いてる時見てやれるしいつでも声かけてくれ。木虎もゆうに会いたがってたしな!」
「けど嵐山さんすっっごく忙しいじゃないですか〜最近なんて特にメディアで引っ張りだこ!あっでもわたしも木虎に会いたい」

嵐山は携帯を取り出しスケジュールを確認する。
やや画面と睨めっこした後オフの日を教えてくれた。

「次の土曜の午後1時からなら嵐山隊はオフの予定だ」
「えっでもせっかくのオフなのに!いつも忙しいのでゆっくり休んでくださいよー!」
「いいんだ、たまにはこういう日を設けないとな。木虎には後で伝えておくから」
「わわわありがとうございます!!」

ゆうは勢いよく頭を下げお礼を全力で伝えた。
頭を上げてからは楽しみなのが顔にも溢れ出ている。

「そんなに喜んでもらえると俺も嬉しいな、迅のように訓練してやれるかわからんが全力を尽くす」
「だって憧れの嵐山さんが直々に訓練に付き合ってくれるんですよ?わたしもう幸せすぎて死にそうです」
「あはは、死なれるのは困るな。俺が迅に殺されそうだ」

2人でケラケラと笑いながら歩いて気がつけばわたしの通う高校前まで来ていた。

「…あっ!もう学校だ!嵐山さんすいませんちょっと遠回りになってしまいましたよね」
「ん?あぁ最初からゆうを送ってから行こうと思ってたから大丈夫。勉強頑張れよ!」

そう言うと嵐山は手を上げゆうに笑いかけると背を向け大学へと向かった。

ゆうは教室は着き自分の席に座るとカバンからスケジュール帳を出し土曜日のところに"午後1嵐山さん♡"と書き込みそっと閉じてカバンに戻した。

ゆうの顔は綻びっぱなしで誰が見ても良いことがあったんだなと思う顔だった。

「はよー、どうしたんだよニヤけて」
「お、ゆう。はよー」
「ふふふ出水によねやんおはよぉ〜」
「うわ何きもっ、いつもそんな喋り方じゃねぇじゃん!まじ何かあった?てか変なもん食った?」
「こいつさっき校門前で嵐山さんと居たみたいだぜ?他のクラスの奴らが話してた、ココまで一緒に歩いてんの見たって」
「嵐山さんが?大学行くにしてもこっち方向じゃなくね?」