chapter:この想いをキャンバスに込めて。 「うわああっ!!」 焦ったのはもちろん、俺だ。 だって、先輩のことを人知れず、こっそり見ていたことがバレてしまったから!! どうする俺。 俺の気持ち、知られたのか!? だって、絵はその人の気持ちを鮮明に浮き出させるもので、見た人に共感を得ることも可能だ。 これは、もう絶対、恋心を知られた。 もう、部活に来られないかもしれない。 先輩にも会えないかもしれない。 ああ、嫌われた……。 「藤堂くん」 いつもより大分低い声は、震えているようだ。 これは気のせいではないだろう。 ……かなり怒っているかもしれない。 まあ、それはそうだろう。 許可も得ていないのに、勝手に肖像画を描いたんだから……。 「……はい」 額からダラダラと流れる冷や汗。 俺は固く拳をつくって、先輩の顔を見る。 沈黙がしばらくの間流れ……そうして居たたまれない空間になる中、先輩は紅色の唇から言葉を弾く。 「僕に何か言うことない?」 ああ、もう潮時か……。 先輩への想いは、これで打ち消さねばならない。 俺は観念して、緊張で乾ききった薄い唇を開けた。 「先輩好きです。美術部に入る前から、先輩のこと、ずっと見てました」 俯いた先輩を見つめる俺。 すると、先輩は顔を上げて――……。 「うん、僕も!!」 にっこりと満面の笑みを浮かべて、そう言った。 ――はあ? |