キャンバスに映る貴方
第一話





chapter:この想いをキャンバスに込めて。





「よかった〜、言ってくれて。なんとなくそうなのかなぁ、って思ってたんだけどね」


先輩はそう言って、口をあんぐり開けている俺から遠ざかり、別のキャンバスが乗っているイーゼルを裏返す。

そうして見えたのは……。



黒い短髪、ほっそりとした輪郭に乗る細い一重の目。

無愛想な、俺が笑っている姿だ。



「僕も好き」




予想していた成り行きとは違った現実――。



……チュッ。

固まっている俺の唇に、先輩の紅色の唇が触れる。

リップ音が、やけに大きく聞こえた。




――夢か?

――白昼夢か?




――それでもいい。




俺は、すがりつく先輩の華奢な腰を引き寄せ、もう一度――今度はこちらから、紅色の唇に、自分の薄い唇を押しつけた。



◆この想いをキャンバスに込めて。**END◆


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