chapter:この想いをキャンバスに込めて。 ふんわりと笑う彼は、まるでフェルメールが描いた絵の、『真珠の耳飾りの少女』のようだ。 思わず先輩に見とれてしまい、ぼーっとしてしまう。 その俺にいつの間にか歩み寄ってきた先輩は、キャンバスを覗き込もうとする。 ヤバイ!! まずい!! だって、これは先輩を描いたんだ。 しかも、本人の許可もなく――。 だから見られてはいけない。 熱に浮かされた頭は一気に冷め、全身の毛穴が広がるのを感じた。 俺は慌てて、先輩とキャンバスの間に立ち、絵を覗かれないよう、ブロックした。 目と鼻の先――ほんの数センチの距離には先輩の綺麗な顔がある。 「どうして見せてくれないの?」 細い眉が悲しそうにハの字になった。 ……顔が近い……。 先輩とキャンバスの間に立ったのは間違いだったと、今更、気付いてもどうしようもない。 「いえ、わざわざ他人に見てもらえるような絵でもないので!!」 慌てて言った言葉は早口で、突き放すような言い方になってしまった。 好きな人に対する自分のぶっきらぼうな言い方が、自身の胸をえぐる。 「ふ〜ん、でも……。みんな見てるよね、君の絵。僕だけだよ? 君の絵を見てないの」 「そ、それは……」 悲しそうに目を伏せる先輩に、失礼なことをしたと、しどろもどろになる俺。 「なんちゃって、えいっ!!」 ――え? 先輩は伏せていた顔を突然上げると、俺の肩越しから身を乗り出し、キャンバスを……覗いた。 |