キャンバスに映る貴方
第一話





chapter:この想いをキャンバスに込めて。





ふんわりと笑う彼は、まるでフェルメールが描いた絵の、『真珠の耳飾りの少女』のようだ。

思わず先輩に見とれてしまい、ぼーっとしてしまう。

その俺にいつの間にか歩み寄ってきた先輩は、キャンバスを覗き込もうとする。



ヤバイ!!

まずい!!


だって、これは先輩を描いたんだ。

しかも、本人の許可もなく――。


だから見られてはいけない。

熱に浮かされた頭は一気に冷め、全身の毛穴が広がるのを感じた。


俺は慌てて、先輩とキャンバスの間に立ち、絵を覗かれないよう、ブロックした。

目と鼻の先――ほんの数センチの距離には先輩の綺麗な顔がある。




「どうして見せてくれないの?」

細い眉が悲しそうにハの字になった。



……顔が近い……。


先輩とキャンバスの間に立ったのは間違いだったと、今更、気付いてもどうしようもない。


「いえ、わざわざ他人に見てもらえるような絵でもないので!!」


慌てて言った言葉は早口で、突き放すような言い方になってしまった。

好きな人に対する自分のぶっきらぼうな言い方が、自身の胸をえぐる。


「ふ〜ん、でも……。みんな見てるよね、君の絵。僕だけだよ? 君の絵を見てないの」


「そ、それは……」

悲しそうに目を伏せる先輩に、失礼なことをしたと、しどろもどろになる俺。


「なんちゃって、えいっ!!」


――え?



先輩は伏せていた顔を突然上げると、俺の肩越しから身を乗り出し、キャンバスを……覗いた。


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