キャンバスに映る貴方
第二話





chapter:恋慕







「なあ、いいじゃん。今日、今からどっか行こうぜ?」

そう言って、僕の肩に手を乗せるのは、校則違反なのに金髪にしている同じ美術部の山本 恭一(やまもと きょういち)。


彼は、人が居ようが居まいが、何かにつけて僕につきまとってくる。

正直、毎度毎度で結構疲れる。


僕と山本 恭一とのやり取りが日常化してしまったおかげで、ここにいる同じ部である数人の男子は気にも止めず、ただ黙々と手を動かす。


誰も助けてくれないのは今にはじまったことじゃないじゃないか、如姫 心桜(きさき みおう)!! さっさとこの手を払いのけよう。



「あのね、いい加減にしてくれない? ここは美術室で絵を描くところ。でもって……」

「今は部活の時間。そうだろう?」


僕の言葉を遮って、彼は大きい口をニンマリと曲げる。



分かっているなら、僕の楽しみの邪魔をしないでほしい。


ひとつ、ため息をついて、僕はイーゼルに乗っているキャンバスと向き合う。


「な、いいじゃん。終わった後でもいいからさ。俺、欲求不満でさ……」


彼は、僕の耳元で囁くようにそう言って、美術部員が他にもいるのに構わず、空いている片方の手を伸ばし、太腿の内側を撫でてきた。

山本 恭一の手の感触が気持ち悪い。

吐き気さえ、おぼえる。


「やめっ!!」

『やめて!!』

僕が、そう言おうとした時だった。


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