キャンバスに映る貴方
第二話





chapter:恋慕





僕の唇に、彼の親指が触れる。

弾力のある親指の触覚が、触れられた唇から全身にわたって、身体中に痺れをもたらしてくる。



気がつけば、僕は彼の骨ばった大きな手に、自分の手を重ねていた……。


彼に、『好き』だと告白したい。

でも、もし彼がノンケだったらどうしよう。

告白して振られるのは百歩譲っていいとして、嫌われるのは、とても悲しい。

それはとても苦しいことだ……。


「藤堂くん……あの……」

「先輩、帰りましょう。少し冷えてきました」

震える唇で、愛おしい彼の名前を呼ぶと、それを拒むかのように、添えられた親指が、僕から離れる。

背を向けられた。

どうやら僕はおかしな行動をとってしまったようだ。


顔を合わせるたび――。

声を聞くたび――。

言葉を交わすたび――。



こうして、僕の中では貴方を想う気持ちが膨れ上がっていく。


――どうしよう。
どうすればいいのだろう。



ほんとうに、どうしよう……。


足踏みをしていると、藤堂くんの腕が伸びてきた。

僕の傍らに置いてあった学生カバンが、たくましい肩に担がれる。


「あ……」

「荷物、持ちます。鍵締めてくださいますか?」

学生カバンの中には辞書やらが数冊入っていてすごく重いのに、その上、キャンバスをまとめて風呂敷に包まれている物まで持ってくれる。



――実は、その風呂敷の中身こそ、彼に知られてはいけない物だったりする。


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