chapter:恋慕 「でも、荷物重たいでしょう?」 「いえ大丈夫です」 そう言う彼は、相変わらずの無表情だ。 でも、彼はとても親切で、僕が困っている時、そうやっていつも何気なく助けてくれるのはもう知っている。 僕のカバンを持ってくれるのは嬉しい。 だけど、その風呂敷だけでも返してほしいんだけれど――。 ああ、でも、そんなことを言えば、余計に不思議がられて、風呂敷の中身を見られる可能性がある。 「ありがとう」 内心、中身を見られないかドギマギしながらひとつ微笑むと、ポケットに入れていた部室の鍵をかけて、藤堂くんと学校を後にした。 「それじゃあ、また明日」 藤堂くんと部活について、何気ない話をしながら部室の鍵を職員室まで届けて、校門に着いた。 これで彼とはひとまずお別れだ。 名残惜しい気持ちに苛(さいな)まれながら、僕は藤堂くんから学生カバンと風呂敷を受け取ろうと手を伸ばした。 だけど、彼は僕の荷物を手放そうとしない。 いまだ、両肩にカバンを担ぎ、キャンバスを数枚まとめて包んでいる風呂敷を手にしている。 「送ります。もう夜遅いんで、先輩に何かあったら困りますから……」 たかが家に帰るだけ。 ――しかも、学校から数分で家に着く。 それに、僕は男で、何もあるはずがない。 それなのに、彼はそう言って、首を横に振った。 まだ一緒に居てくれる。 それがとても嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう。 |