chapter:恋慕 「ありがとう。でも、僕に危険は何もないと思うよ?」 校内では男子しかいないから、皆そうやって、僕のことを異性でも見るような目で見てくるけれど、いざ外に出れば、僕はやはり男だ。 危険も何もないと思う。 それなのに、彼はまたもや首を振った。 「先輩は自覚がなさすぎる……」 ため息混じりで告げられた言葉は、ぼくにとって、残酷なひと言だった。 だって、その言い方は同じ男として、対等に扱われていない証拠だ。 少しだけ、男としての意地がでてしまう。 彼と対等な立場になりたい。 彼の隣に居たい。 そんな感情が、頭をもたげてくる。 「僕はそんなにヤワじゃないよ?」 けっして対等になれないという、この悲しみを、彼は永遠に理解してくれないだろう。 僕は、感情を押し殺し、彼に微笑んで見せた。 すると彼は突然、広い肩にかけていたカバンふたつとキャンバスが入った風呂敷を路上に置いて、僕と向かい合った。 重々しい音が、夜道に響いたと思った瞬間――。 気がつけば、僕は、力強い腕に包まれていた。 いったい、何が起こっているんだろう。 自分の身に起こっている出来事なのに、それをうまく理解できない現状――。 「あ、あの……」 「俺を振りほどけますか?」 ――え? 「如姫先輩……」 愛おしそうに名を告げられて、思わず身体が震えてしまう。 |