chapter:恋慕 彼の夜空のように瞬く一途な瞳が、しどろもどろになっている僕を映す。 すると、彼は何を思ったのか、顔を近づけてきた。 僕は抵抗するのも忘れて、彼の腕を強く掴み、目を伏せる。 彼の吐き出す甘い息が、僕の頬に触れる。 みぞおちが疼いた。 キス……される? 歓喜に震える身体を必死に押し止めて、彼の唇を受け入れる準備をする。 ――だけど、僕が待ちに待っていた薄い唇の感触は、一向にやってくる気配はない。 「……ほら、やっぱり危ない」 コツン。 僕の細い肩に、彼の額が当たる。 「っあ、危なくない!!」 「はいはい」 キスは、貴方だから受け入れようと思っただけ――。 それなのに、僕の想いを知らない彼は、振りほどけないのだと、簡単にあしらってくる。 ――ねぇ、どうしてキスをしようとしたの? 本当は僕のこと、どう思っているの? 僕は先を行く彼の背中を見つめ、怒るふりをして、心の中で、ずっと彼に尋ねていた。 藤堂くんに家まで送ってもらって、無事家に着いた僕は、自分の部屋に入るとすぐに、ベッドへと倒れ込んだ。 まだ心臓が大きく鼓動している。 トクン、トクン、といつもより少し速い心音を聞きながら、自分の唇にそっと触れてみる。 彼とのキスはいったいどんなふうなんだろう。 惚(ほう)けた頭で思い描き、ベッドからむくりと身体を起こすと、部屋の入口に無造作に置いた風呂敷を開ける。 |