chapter:恋慕 ――そうして出てくるのは、キャンバスに描かれた、彼の姿。 象牙色の肌に整った端正な顔立ちの彼。 人知れず、こっそりと描いた藤堂 涼くん。 明日の美術部の提出する絵は、これでないものをと考えた。 だけど、今作成中の絵はまったく進まず、けれど彼を描いた絵の方がすぐに出来上がってしまう。 実はもうひとつ、これとは違った彼の絵も、美術室にある。 ――どうしよう。 僕の中で、彼がたくさん埋まってしまう。 僕の身体を包んでくれた、力強い腕の感触が忘れられない。 まるで、僕の心を試すように抱きしめた彼――……。 貴方は何を思っているの? 僕のこと、少しでも想ってくれている? 貴方は、僕が簡単に振りほどけるかどうかを試したのかもしれないけれど、キスしようとするその行為は、誰にでも簡単にできるものではないよね? ……怖い。 彼の気持ちを知ろうとすれば、身体が竦(すく)み上がり、震える。 だけど……。 キスされると思った時の――あの熱を帯びたような強い眼差し……。 あれは僕を想ってくれているもののように感じる。 明日は絵の提出日。 生真面目な彼のことだ。 きっと早朝、絵を描き上げに、部室へとやって来るだろう。 僕も明日、朝早く学校に行って彼の真意を確かめよう。 もう、無理だ。 もう限界……。 彼に抱きしめられて、僕の身体も、心も、すべてが熱を持ちはじめてしまった。 |