chapter:恋慕 恋を隠し通す気力もない。 ――もし断られたなら……。 そう思うと、胸が引き裂かれるかのように痛み出す。 だけど、それでもこの想いを諦めきれないだろう。 だったら、いっそのこと告白して、僕を好きになってくれるまで、彼につきまとってみようか……。 あの、山本 恭一のように、何度もしつこく……。 「藤堂くん……」 愛おしい名を、そっと唇に乗せて、彼の姿を描いたキャンバスを抱きしめる。 彼を想うたび、考えるたび、熱を孕(はら)む僕自身が勃ち上がりはじめる。 彼の腕のぬくもりを知りたくなる。 欲しくて欲しくて、たまらない。 僕は残り少ないその日を、身も焦がれるような想いに苛まれながら、過ごした。 ――翌朝。 時刻は八時を少し過ぎたところ。 僕は美化委員が清掃をしている学校の正門をくぐり、五階にある美術室へと足を向けた。 校内は人がほとんどと言っていいほどいない。 いるのは、その日の日直くらいなものだろう。 人気がない朝の学校ということもあってか、僕の心臓が忙しなく鳴っているのが聞こえる。 早く美術室に行きたいのに、それでも足が震えて、うまく進むことができない。 気持ちばかりが焦ってしまう。 はやる気持ちとは裏腹に、長い階段をゆっくりと上っていく――……。 冷たい廊下に、たったひとり分の足音が響く中、やっと見えた五階にある教室の一角に見えるのは、高々と掲げられているプレートの美術室という文字だ。 |