キャンバスに映る貴方
第二話





chapter:恋慕





僕は一度、深く深呼吸をした後、目の前にあるドアを開けた。


――同時に、まだ慣れていない油彩の香りが、起き抜けの鼻を刺激してくる。



視界に映ったのは、普段、切れ長の細い目をしている彼が、大きく見開いている姿だ。


そんな長身の彼の前にはイーゼルの上に乗っているキャンバスが置かれ、片手にはパレットを手にしている。

今まさに、絵を仕上げようとしているところだったらしい。



ほらね、やっぱり僕の考えは当たった。


僕は自分の考えたとおり、彼の行動が当たったことが嬉しくって、内心ニンマリしてしまう。



「やっぱりいた。熱心なんだから……」

真剣な顔をしてキャンバスに描く彼。

彼はいったいどんな絵を描いているのだろうか。


美術部部長の僕でさえも、実はまだ、彼の絵を見せてもらったことがない。


「先輩!!」


僕が彼の絵を覗こうとすれば――藤堂くんは、こうしていつもキャンバスの間に立ち、僕を拒む。



――どうして?



「どうして見せてくれないの?」


どうして皆は、貴方の絵を見ているのに、僕には見せてくれないの?


悲しい気持ちが胸に広がっていく――……。


目頭が熱くなる。

ダメ、泣いちゃダメ。



まだ彼の真意を聞いていないのに、泣いたら余計、悲しくなって、話をするどころではなくなってしまう。

だからまだ、泣いてはダメだ。



「いえ、わざわざ見てもらえるような絵でもないので!!」


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