キャンバスに映る貴方
第二話





chapter:恋慕





口角が下がってしまうのを必死に堪(こら)える僕の気持ちを知らない彼は、早口で、僕を突き放すように、そう言った。


それが余計に悲しくさせる。

でも、泣かない。

今はまだ……。


そう自分に言い聞かせるのに……だけど、ダメ。

ほんの数センチに迫っている彼の顔がまぶしすぎて、彼の目を見ることさえできない。

視線を床へとずらし、彼に言葉をかける。



「ふ〜ん、でも……。みんな見てるよね、君の絵。僕だけだよ? 君の絵を見てないの」


「そ、それは……」

しどろもどろになった彼は、身体を硬直させた。




今がチャンスだよね。

絵を見るのは今しかない。

そんなに僕に絵を見られるのがイヤなら、見てやろう。



なぜかおかしな反抗心が、僕の中で芽生えた。



「なんちゃって、えいっ!!」

僕は俯けた顔を上げて、身を乗り出し、キャンバスを覗いた。



「うわああっ!!」

今まで聞いたことがないくらい、普段冷静な藤堂くんが、耳をつんざくような大きな声を発した。


でも、彼が描いた絵を見た今の僕には、彼の悲鳴も何も聞こえてこない。



……だって。キャンバスに描かれたのは――窓際で微笑む、僕があったから……。



「藤堂くん」


ドクン、ドクン。


やけに心音が大きく鳴り響く。

僕の口から出た彼の名前は、嬉しさのあまり、震えてしまう。


「……はい」


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