キャンバスに映る貴方
第二話





chapter:恋慕





そうして片隅に置いてある、たくさんのイーゼルの中から、キャンバスが乗っている僕のイーゼルを裏返した。



そこに描かれているのは、黒い短髪。

ほっそりとした輪郭に乗る細い一重の目。

凛々しい彼が優しく微笑む姿――……。



「僕も好き」


すごく好き。



振り返って彼を見れば――。


うそ、まだ硬直してる。



もう!

いくら朝だからって、いつまでも呆けてないで僕の気持ちをいい加減、理解してよ。



僕は、瞬きすらしない彼に近づいて、微動だにしない薄い唇に、自分の唇で塞いだ。


息を飲む彼の唇ごと、唇の感触を堪能する。




「如姫先輩……」

僕が彼の唇を覆っていると、彼は掠れた声で名を呼び、僕の腰を引き寄せてくれた。



「……っふ」


好き。

大好き。



僕は重なる唇に想いを込めて、彼の唇を堪能した。



◆恋慕**END◆


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