キャンバスに映る貴方
第四話





chapter:恋心





神々しい彼の薄い唇がひらき、何かを告げている……。

だけど生憎、人間の僕には彼が何を言っているのか、わからない。

その姿さえも絵になって、とても綺麗……。



「先輩……?」



ああ、彼が僕の返事を待っている。

早く言葉を返さなきゃ……。



焦る心とは裏腹に、ふんわりと笑う彼の顔がすごく綺麗で、何も言うことができない。


視線は彼に釘付けだ。



「……先輩? 心桜先輩!?」

「へ? あ、う、うん」


ぼーっとしていた僕は、近づいてくる涼にも気づかず――そうして何度、名前を呼ばれただろう。

目の前に彼の顔があって初めて、返事をした。


凛々しい眉が心配そうに垂れていて、真っ直ぐな漆黒の瞳が僕を見つめている。



恭一に迫られて気持ち悪かったのに、それも忘れた僕の胸が、ときめく。

「えっと……そう。放課後までの期限だものね」


『迫ってくる山本 恭一から逃げてきました』

――なんて、年下の涼に余計な心配をかけるわけにはいかず、僕はコクンと頷いた。


慌てて頷いた僕に何かを感じ取ったんだろう彼は、訝(いぶか)しげに顔色を窺ってくる。


心を見透かそうとする真っ直ぐな眼差しに、居たたまれない雰囲気を感じた僕は、視線を教室の空間へと移した。



明るい太陽の日差しのせいだろう。

今朝の静かな教室とは違って、今は活気にあふれている。

まるで、教室全体がおしゃべりしそうだ。


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