chapter:恋心 この恋はきっと、彼には届かないと思っていたから……。 だけど、そんな幸せもすぐに掻き消えてしまうなんて、その時の僕は知る由もなかった。 それから僕は、たくさん涼とキスをして、一緒に購買でパンを買って食べて……部活の提出課題を描いて昼休憩を過ごした。 そんな楽しい時を過ごした後に、涼と別れて大嫌いな恭一がいる教室に戻るのはすごく億劫だ。 だから足取りは重いし、表情は曇る。 涼がいない、大嫌いな教室のドアの前に立ち、深呼吸をして顔つきを変える。 涼といた時のようには笑わない。 だって、笑えない。 もし、少しでも笑えば、そいつに興味があると思われてしまう。 ――それは過去。 この学校に入学した当初に体験したことだった。 放課後、日直だった僕はひとりで日誌を書いていると、僕の前に五人の男子がやって来て、強姦されそうになったことがあった。 着ていたカッターシャツは、力任せに引き千切られ、下着ごとズボンさえも取り除かれそうになって――。 僕ひとりに対して、相手は五人で、当然、抵抗してもふりほどけることもできず、ただされるがままだったのを、今でも思い出したくもない記憶として残っている。 その時は幸い、先生が駆けつけてくれてなんとか無事だったけれど、ほんとうに危機一髪っていうところだった……。 だから僕は、学校では笑わない。 |