chapter:恋心 涼以外の場所では囲いを作って、誰にも僕に触れられないようにする。 だけど、恭一だけは違う。 アイツは僕の囲いを平気で乗り越えてくる。 忌々(いまいま)しい……。 歯ぎしりしてしまったところで、顔を上げて、自分の席を視界に映す。 そうして、僕は彼の所有物だとそう言うように、僕の席に座っている彼を見つけるんだ。 冗談じゃない。 誰が、恭一なんか。 考えただけでも寒気がする。 僕が睨めば、恭一は唇だけを曲げて、うっすらと嫌味ったらしい笑みを浮かべた。 かち合う視線に、また気持ち悪くなる。 「そこ、どいて」 「ひどいな、キミを好きすぎて困っているのに……ゴミみたいな扱いしないでよ」 『自分は被害者だ』 そう言う、この厚かましい態度がムカつく。 負けずに睨み返せば……。 「いいのかな? そんな態度をとっても。さっき美術室で、いいもの見ちゃった……」 ……ぼそり。 耳元で囁かれた。 その息さえも生理的に受け付けない。 だけど今は、吹きかけられた息よりも、恭一が言った話の内容の方が重要だった。 『さっき』 『美術室』 そのふたつの言葉に当てはまるのは、間違いなく涼との出来事だ。 「……っつ!!」 まさか。 恭一に、涼とキスするところを見られていた? ……そんな。 どうしよう。 僕が涼と付き合っているって知られたら、涼に迷惑がかかってしまう。 |