chapter:恋心 僕よりも年下なのに、彼が大丈夫だってそう言うと、本当に大丈夫だと思える。 「お前……校内で暴力をふるって、どうなるかわかってるのか?」 血が滲む口の端を拭いながら負け惜しみを言う恭一は、もう先輩としての威厳も、あったものじゃない。 「へぇ? ですがこれは正当防衛だと思いますけど? それに自分のモノを返してもらって何が悪いんでしょうか? 心桜は渡さない」 「っつ、涼……」 『心桜は渡さない』 その言葉が嬉しくて、首に回した腕に力を入れて、縋り付く。 涼を逃すまいと、必死に腕を巻き付ける僕に、涼は大きな手で、僕の背中をさすってくれている。 「どうして? どうして涼がいるの?」 目の前にいる涼に触れてみても現実味がなくて、彼に尋ねてみる。 「ん? ああ、いつも誰よりも真っ先に部室へ駆けつける部活熱心な先輩がなかなか来ないから、心配になって来てみました」 涼は、僕が思っていたよりもずっと、僕を見てくれていた……。 そのことが嬉しい。 骨ばった親指の腹が僕の目尻を撫でて、涙の痕を取り除いてくれる。 涼に触れられた箇所が熱を持つ。 じんわり胸が熱くなって、僕はまた、たくましい涼にしがみついた。 「心桜……」 「……ん」 熱っぽく名前を呼ばれて顔を上げれば、すぐに唇が塞がれた。 「っふ……んぅ」 深い口づけに酔わされて、息が荒くなる。 |