chapter:甘い吐息 ◆Side:Mioh Kisaki◆ 学校から自宅まで歩いて約十五分。 破られた制服ではまともに外を出歩けなくて、涼にジャージを借りた。 涼は三人家族で、父親は今日は泊まりで仕事。 母親は看護師で夜勤らしい。 僕は、恭一に触れられた身体が気持ち悪くて、徒歩十分前後の涼の家で、バスルームを借りている。 一分、一秒でも早く、身体に受けた恭一の唇の感触を消したい。 涼と向かい合うのも、僕が汚れてしまったように感じて、吐き気がする。 涼が助けに来てくれて嬉しいハズなのに、キスをしてもらう度に、涼じゃない人に触れられてしまったという罪悪感が生まれていく――……。 唇を噛み締めてしまいそうになるのを我慢して、涼に、にっこり微笑むと、すぐにバスルームのドアを閉めた。 ……これで一人になれる。 ほっと一息ついて、布に包まれていた身体を剥き出しにする。 触れられた胸に視線を落とせば、赤い痕跡が残っていた。 これはまぎれもなく、恭一がつけたキスマークだ……。 ムカつく。 腹が立つ。 だけどこの感情は、『僕に手を出した恭一に』じゃない。 恭一の腕を振りほどけなかった自分に対してだ……。 ギリリと唇を噛みしめ、涼が温めてくれたバスルームに入る。 少し熱めのシャワーを浴びたら、身体に付けられた恭一の滑りを帯びた、あのベトつく感覚を排除できるかと思ったけれど、やっぱり無理。 |