chapter:甘い吐息 待ってと言った言葉は、だけどドアが開く音でかき消されてしまった。 「先輩!!」 「……っつ!!」 僕の身体を、タオルで擦り続けるその姿が異様だと思ったのだろう。 涼は、動かし続ける僕の腕を掴むと、無理矢理、振り向かされた。 「心桜!!」 「いやっ!!」 離して! この身体のままじゃ、涼に見せることができない。 「見ないで……いやっ!!」 汚い身体を見られて嫌われてしまうのが怖くて、せめて顔だけは見られないようにと、俯けたまま首を振る。 そんな僕の目の端では、髪に付いている雫と目から零れた涙の水滴が散っていくのが見えた。 「心桜!!」 ビクッ! 咎(とが)めるような彼の声に、身体が跳ねる。 一雫の涙が流れた。 「恭一に付けられたキスマークが消えないんだ……汚いから……だから……」 『消さなきゃ』 そう言おうとしたら……。 「心桜!!」 僕の唇が、塞がれた。 「んぅ……」 荒い息を繰り返す僕の口内に舌が入り込んで、上顎をなぞられる。 僕の舌に薄い唇が吸い付き、おかげで口を閉じることさえできない。 舌を甘噛みされて、疼き始める身体は、言うことを聞いてくれない。 膝は力が抜け落ち、涼へと倒れ込む。 涼は、僕とは違って服を着ているのに、濡れるのもおかまいなしに、僕を包んでくれた。 「心桜、聞いて。俺は貴方を汚いとかそんなことは思わない。あれは事故だったんだ。だから心桜のせいじゃないんだよ?」 |