アラビアン・ナイト
番外編 第三話





chapter:ヘサームとワーリー王





「申し訳ございません。急ぎ、その件の収束を図ろうと動いているのですが、なにぶん、奴らはその時々で場所を変更しているらしく……」


ヘサームはふたたび顔を伏せ、王に謝罪する。



「ふむ」


「盗人も出現するとか?」


「――――は?」


 公務について責められるのかと思いきや、しかし、思いもよらない言葉が返ってきた。


 ヘサームは眉根を寄せ、ふたたび顔を上げた。



「なんだ、お前知らぬのか? 何でもその盗人、かなりの腕前で、我が兵もいくらかやられたとか。


少女のような容姿なのに、たいそう腕が立つと、巷では評判だぞ?」


 ワーリー王の薄い唇の端がつり上がっている。どこか楽しそうに話す彼は、本当に一国の主であろうか。

 常に冷静沈着。――そして何より、威厳を漂わせている彼であっても、兄の前であれば本性が出る。


 ワーリー王に秘められた内面は、おそらく限られた者にしか知らない。


 彼は好奇心が旺盛だった。

 だからこそ、といえばそうなのかもしれない。

 今まで、先代の王たちが為し得なかった様々なことを思いつき、実行に移す。



――たとえば、そう。

 今までは血筋を重んじていた重役たちに、才ある者を昇格させるように命じたのも、彼だった。

 時にその好奇心は役に立つ。それは認める。しかし、である。

 ヘサームにとって、今はそうではない。





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