chapter:ヘサームとワーリー王 「お呼びでしょうか」 ヘサームは、だだっ広い20帖以上はある石造りの宮殿の応接間で玉座に鎮座している彼と向き合うと、静かに一礼した。 この部屋は、人が彼以外いないからだろうか、ヘサームはいつもより広く感じた。 「堅苦しい挨拶は抜きにしよう? 我が兄よ」 彼はそう言うと玉座から腰を上げ、深く頭を下げているヘサームのすぐ前までやって来た。 彼は、褐色がかった健康的な体ではあるが、けっして筋肉質でもなく、ほどよい肉体美を持っている。 身長は185センチ。ヘサームとほぼ変わらない長身で、黒髪とやや大きめの黒い目。面差しもどこかヘサームと似ていた。 ヘサームを兄と呼ぶこの人物こそ、この国を治めるワーリー王その人だ。 年齢は22歳で、ヘサームよりも3歳ほど年下である。 「そうはまいりません。貴方はこの国の王でいらっしゃる」 ヘサームは自分に言い聞かせるようにそう言うと、下げていた頭を戻し、ワーリー王と視線を交えた。 「そして、腹違いの兄でもある」 ――違うか? そう言うワーリー王の目はどこか挑戦的だ。ヘサームは首を振り、大きく息を吐いた。 しばしの沈黙が続く。 しかし、この沈黙さえも、常日頃のワーリー王とヘサームのやり取りだった。 「小耳に挟んだのだが、ここ最近、抜け荷が多くなっていると聞く」 |