chapter:Bump~運命の出会い ……ポタッ。 オレの目から生まれ出た涙は頬を伝い、シミひとつない、綺麗な絨毯に落ちた。 オレの大粒の涙はすぐに、絨毯へと吸収されていく……。 それはまるで、涙がオレたちスラム街に生きる人間で、絨毯がこの街に住む人間のように見える。 飢えたオレたちの命が、身分ある奴らに吸い取られていくみたいだ……。 うつむいて泣いていると、頭上から、男の声が落ちてきた。 「……すまない、軽率な行動だった」 ――えっ? こいつ、今、なんて言った? 命を助けてもらった相手に礼すら言っていないどころか、オレは男を愚弄した。 せっかく差し与えようとした宝石を、オレは弾き飛ばした――。 下民が、自分よりもずっと上の位にいる人間の拒絶した。 それは、男のプライドを傷つけることになるだろう。 だから男は、『なんて不作法な奴なんだ』って、怒るに違いない。 すくなくとも、オレはそう思っていた。 それに、しょせん金持ちは金持ちだ。 オレの苦しみを言葉にしたって、どうせ何もわからない。 言ったところで時間の無駄だ。 そう考えていたオレの思考は、だから男の言葉で完全に止まった。 だって、オレを助けようとしたのは、男にとって、ただの偽善にすぎないって思った。 それなのに……。 目の前にいるこの男は、人前で泣いている恥知らずなオレに向かって、目を細めて悲しそうに微笑んでいる。 |