アラビアン・ナイト
第二話





chapter:Bump~運命の出会い





……ポタッ。


オレの目から生まれ出た涙は頬を伝い、シミひとつない、綺麗な絨毯に落ちた。



オレの大粒の涙はすぐに、絨毯へと吸収されていく……。


それはまるで、涙がオレたちスラム街に生きる人間で、絨毯がこの街に住む人間のように見える。



飢えたオレたちの命が、身分ある奴らに吸い取られていくみたいだ……。




うつむいて泣いていると、頭上から、男の声が落ちてきた。



「……すまない、軽率な行動だった」




――えっ?


こいつ、今、なんて言った?



命を助けてもらった相手に礼すら言っていないどころか、オレは男を愚弄した。


せっかく差し与えようとした宝石を、オレは弾き飛ばした――。


下民が、自分よりもずっと上の位にいる人間の拒絶した。



それは、男のプライドを傷つけることになるだろう。



だから男は、『なんて不作法な奴なんだ』って、怒るに違いない。



すくなくとも、オレはそう思っていた。



それに、しょせん金持ちは金持ちだ。

オレの苦しみを言葉にしたって、どうせ何もわからない。



言ったところで時間の無駄だ。


そう考えていたオレの思考は、だから男の言葉で完全に止まった。


だって、オレを助けようとしたのは、男にとって、ただの偽善にすぎないって思った。

それなのに……。




目の前にいるこの男は、人前で泣いている恥知らずなオレに向かって、目を細めて悲しそうに微笑んでいる。





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