アラビアン・ナイト
第八話





chapter:Seek~傷負い人







「……げろ。逃げろ、アティファ……」


「馬鹿だな、自分の方が辛いのに……」


「まったくだ」


薄い唇が開くたび、何度も繰り返されるその譫言(うわごと)に対して発言したオレに同意したのは、隣にいるナジさんだ。

彼はなんでも、この街きっての名医で、本人いわく、ヘサームとは腐れ縁だとか……。


年齢はヘサームと同じらしいんだけど、ナジさんの方が少し大人っぽいような気がする。


それはきっと、落ち着いた雰囲気のせいかもしれない。


それに、容姿も大人の男性って感じがする

長いまつげに覆われているやや細い目。高い鼻の下にある薄い唇。


彼は医者としての腕だけではなく、容姿も完璧だ。


あ、だけどやっぱりオレはヘサームの方が格好いいって思うけどな。


これはきっと、惚れた弱みっていうヤツだ。




それで、ヘサームの容態はっていうと、刺された腹から止めどなく流れ続けていた鮮血は、ナジさんの適切な判断で、止まっている。



ヘサームの腹部に、真っ白な包帯が何十にもわたってしっかり巻かれている。



ヘサームが腹部に重傷を負ってこの部屋にやって来てから、2時間が経過した。


真上にあったギラギラと照りつく太陽は今、少し傾きかけている。





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