chapter:Seek~傷負い人 「……げろ。逃げろ、アティファ……」 「馬鹿だな、自分の方が辛いのに……」 「まったくだ」 薄い唇が開くたび、何度も繰り返されるその譫言(うわごと)に対して発言したオレに同意したのは、隣にいるナジさんだ。 彼はなんでも、この街きっての名医で、本人いわく、ヘサームとは腐れ縁だとか……。 年齢はヘサームと同じらしいんだけど、ナジさんの方が少し大人っぽいような気がする。 それはきっと、落ち着いた雰囲気のせいかもしれない。 それに、容姿も大人の男性って感じがする 長いまつげに覆われているやや細い目。高い鼻の下にある薄い唇。 彼は医者としての腕だけではなく、容姿も完璧だ。 あ、だけどやっぱりオレはヘサームの方が格好いいって思うけどな。 これはきっと、惚れた弱みっていうヤツだ。 それで、ヘサームの容態はっていうと、刺された腹から止めどなく流れ続けていた鮮血は、ナジさんの適切な判断で、止まっている。 ヘサームの腹部に、真っ白な包帯が何十にもわたってしっかり巻かれている。 ヘサームが腹部に重傷を負ってこの部屋にやって来てから、2時間が経過した。 真上にあったギラギラと照りつく太陽は今、少し傾きかけている。 |