chapter:Refusal~涙の理由 ……ああ、オレは、なんて酷いことを言ってしまったんだろう。 オレがそうやって罵ったのは、ヘサームに傷つけられるのが嫌だったからだ。 ヘサームに言われる前に、オレから酷いことを言って、自分の身を守ろうとしたからだ。 オレは……。 ――ああそうだ。 ヘサームに、『可愛い』と言われて腹が立たなかったのも――。 人買いに媚薬をかけられた時、ヘサームに会いたいって思ったのも……。 オレを買った奴に組み敷かれた時だって、あんなに苦痛だと思っていたにもかかわらず、ヘサームに抱かれても苦痛だと思わなかったそれも、きっと媚薬のせいじゃなくて……。 オレが――。 『ヘサームのことが好きだから』なんだ。 ――いつ? いつからヘサームを好きだった? それはきっと、初めて会った時から……。 乱暴な物言いをするオレに対して怒りもせず、優しくしてくれた時からだ……。 「ヘサーム、オレはここから逃げないよ」 ――そう。 ヘサームが本当にオレを好きでいてくれているのか、真意を突き止めるまでは!! 従者たちが、ヘサームの傷ついた腹部に包帯を巻き、出血を止めさせる中、オレはヘサームの額から玉のように流れ続ける汗を袖で拭き取ってやりながら、静かにそう言った。 |