アラビアン・ナイト
第一話





chapter:Escape~逃亡の果て





オレたちは、そこに住んでいる。



――え? じゃあ、どうして宮殿がある、この盛んな街に住まないのかって?


それは、オレたちが、身分制度っていう、王が決めた制度でつまはじきにあった、ものすごく下の位にいるからだ。


ひとことで言うならば、人生の負け組みたいなものだな。


スラム街に住むオレたちは同じ人間なのに、そうやって蔑(さげす)まれて生きる奴隷みたいな存在だった。


世間では、今のワーリー王になってから、身分差は無くなったと言うけれど、今も悲しいくらいにそれがちゃんと根付いている。

上の奴らはそれに気づかず、あるいは、気づいていても見ないフリをして生きている。



それは、なんでかって?

そんなの決まってる。


自分よりもずっと苦しい立場にいる奴がいれば、『自分はまだマシだ』って思えるだろう?

そうしたら、この世界も幸せなものに思えてくる。


この世界の頂点にいる奴らは、そういう汚い奴らばっかりだ。

だからオレは、そんな鼻持ちならない金持ちたちが大嫌いだ。


……いつか、きっと――。


こんな狭苦しい国から抜け出して、広い世界を見てみたい。


それが、オレの夢だ。


……なんて、語ってる場合じゃなかった。


「観念しろ、このコソ泥が!!」


目の前に広がる路地からは、ジャンビーアという名前の短剣を腰に差し、白い長衣のカンドーラを着て、頭にスカーフを巻いた細身の兵士がやって来ている。





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