chapter:Escape~逃亡の果て オレたちは、そこに住んでいる。 ――え? じゃあ、どうして宮殿がある、この盛んな街に住まないのかって? それは、オレたちが、身分制度っていう、王が決めた制度でつまはじきにあった、ものすごく下の位にいるからだ。 ひとことで言うならば、人生の負け組みたいなものだな。 スラム街に住むオレたちは同じ人間なのに、そうやって蔑(さげす)まれて生きる奴隷みたいな存在だった。 世間では、今のワーリー王になってから、身分差は無くなったと言うけれど、今も悲しいくらいにそれがちゃんと根付いている。 上の奴らはそれに気づかず、あるいは、気づいていても見ないフリをして生きている。 それは、なんでかって? そんなの決まってる。 自分よりもずっと苦しい立場にいる奴がいれば、『自分はまだマシだ』って思えるだろう? そうしたら、この世界も幸せなものに思えてくる。 この世界の頂点にいる奴らは、そういう汚い奴らばっかりだ。 だからオレは、そんな鼻持ちならない金持ちたちが大嫌いだ。 ……いつか、きっと――。 こんな狭苦しい国から抜け出して、広い世界を見てみたい。 それが、オレの夢だ。 ……なんて、語ってる場合じゃなかった。 「観念しろ、このコソ泥が!!」 目の前に広がる路地からは、ジャンビーアという名前の短剣を腰に差し、白い長衣のカンドーラを着て、頭にスカーフを巻いた細身の兵士がやって来ている。 |