chapter:Sell~人買い スラム街の連中は何をしているんだろうか? 周囲の様子を探るため、見回してみても、他の連中の息遣いはするものの、誰ひとりとして母さんと妹の間に割って入るような人物はいなかった。 ――その理由は知っている。 彼らもできるだけ、自分に降りかかるトラブルを避けたいんだ。 そして、オレが目にしているものは、間違いようもなく、『トラブル』そのものだった。 オレは、ヘサームから分けてもらった大切な食べ物を持っていることも忘れ、地面に落とすと、母さんと妹の方へと駆け寄った。 「さあ、来るんだ!」 「やだっ、いやだ、おかあさんっ!!」 聞こえてくるのは、野太い声をした中年男の声と、拒絶する妹の悲鳴だ。 妹の大きな目からは涙があふれ、必死に助けを求めている。 「お願いです、私からこの子を取り上げないでやってください! 借金なら必ず何とかします。ですからどうか、どうかもう少し猶予をくださいっ!!」 母さんは、目の前にいる男の足にすがりつき、許しを請うていた。 『借金』 その言葉で、オレは奴らが何者なのかをようやく理解した。 奴らは人買いだ。 借金の形に妹を連れて行く気なんだ!! 「ダメだ!! もう期限は過ぎている。金が払えないなら、この娘で払ってもらうしかないだろう?」 「おかあさんっ!!」 |