アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





ビックリした。

だって、ヘサームのことについて考えていたところだったんだ。


オレはほぼ反射的に、うつむいていた顔を上げると、バシラさんの大きな目に悲しみが宿っていることに気がついた。


「わたしは、あの方の乳母なんです」

「えっ?」



突然のカミングアウトに、ビックリだ。

いや、オレ自身、なんとなく、バシラさんとヘサームとは深い関係なんだろうと思っていたけどさ……。




まさか乳母だったなんて驚きだ。


だけど、どうしてそれをオレに告げる必要があるんだろうか。


彼女がヘサームの乳母だからといって、オレがバシラさんをどうこうできるはずもないのに……。



バシラさんの意図はどこにあるんだろう。

オレは、そんなことを考えながら、バシラさんが話すのを大人しく聞く。



「ヘサーム殿のお母上様は、貧しい平民の家柄でございました。

けれども、お母上様は心身ともに、とても美しく、村一番の美女とうたわれておりました。


ある日、前王は、ヘサーム殿のお母上様の噂を耳にして、城下に足を運ばれました。

そして、そんなお母上様を、一目見て、たいそう気に入り、側室としてお側に置かれることにいたしました。


前王は、身分の隔たりも超えて、それはとてもヘサーム殿のお母上様を大切になされました。


そんなおふたりの間にお生まれになったのがヘサーム殿です。


ですが、奥方様は重い病で亡くなり、前王と本妻の王女様の間にご子息がお生まれになりました。


そのご子息が、ワーリー様でございます」





- 67 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom