アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





そこまで言うと、バシラさんは何かを考えるように、一度、口を閉ざした。


ほんの少しの間、沈黙が宿ったかと思うと、バシラさんは、ふたたび言葉を紡ぎはじめる。



「ワーリー様が正式に王位を継がれると、『才ある者を分け隔て無く昇格する』という自らがお決めになった方針で、ヘサーム殿は一般兵へと格下げになりました。



ヘサーム殿は、病で倒れたお母上様のような目にあわせたくないと、貧しい人々を救うため、腕を磨き、王の利き腕ともなる兵士まで昇格なされたのです。

このことは、ごく限られた者しか知らされていない、機密事項でございますが、実はヘサーム殿は、スラム街に水路を作る計画をなされておいでなのです。

彼は、わたしたち貧しい庶民の味方なのです」




すべてを言い終えたのだろう。バシラさんは、深く、目を閉じた。



「そんな……」


そんなこと、信じられるわけがない。


スラム街に水路をつくる?


ヘサームもまた、オレと同じような境遇だった?


信じられない。


バシラさんは嘘をでっちあげているのか?




だとしても、嘘をつく理由がわからない。




――もし、もしもバシラさんの言うことが本当だったとしたら……。


でもさ、だからって、オレにそんなことを告げて何になるっていうの?


バシラさんはいったい、何が言いたいんだろう?


オレは、彼女に尋ねるため、口を開いた。





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